ブロックチェーンは、ゲインははっきり見えているが、まだペインがないと言えます。つまり、ブロックチェーンを活用するメリットはあるのですが、やらないことによるマイナスがまだ少ない。
たとえ話ですが、イーロン・マスクは宇宙開発に注力しています。あれも、彼が宇宙に手を出さなかったところで、何のマイナスもありません。ペインはない状態です。ただ、彼の中で見えている宇宙開発のメリットや価値にゲインがあるのではないでしょうか。ブロックチェーンもこれに近く、無理にやる必要はないものの確実にゲインは見えている状態です。
今後は、そのゲインが実生活に現れる瞬間が多くなるでしょう。ブロックチェーンを使ったサービスは増えるので、価値やメリットをユーザーが体感する機会も増えます。技術を意識しなくても、ブロックチェーンのメリットを享受するのが普通になるかもしれません。
おそらくそのゲインが連続すると、ある瞬間に「ブロックチェーンを使わないことによるマイナス」が出てくるでしょう。企業が避けるべきは、このタイミングに乗り遅れることではないでしょうか。
DAppsと呼ばれる分散型アプリは、ブロックチェーンゲームの「CryptoKitties」あたりから人気を博して、2年を経過しています。この間、グローバルでは様々な新しい取り組みが始まっています。
いつくかの事例を紹介していきます。フィルムで有名なコダック社はブロックチェーンで著作権を管理する「コダックワン」というサービスをリリースし、100万ドル以上のライセンス収入を獲得したと言われています。国内ではAnique社が進撃の巨人などのアニメや漫画などのアートワークの所有権をブロックチェーンを使って販売しています。
この他にも、シティーデジタル社はブロックチェーンを活用したスニーカー取引アプリ「キクシー」を発表し、高騰する人気スニーカーの真贋判定にブロックチェーンを活用しています。
企業がブロックチェーンにどう向き合うか。それはもちろん、企業のビジネスモデルによって変わります。ビジネスがテクノロジーやデジタルで完結している企業は、導入の可能性が高くなるので、今からビジネスモデルを描いておいた方が良いでしょう。
逆に、ブロックチェーンによる収益モデルを明確に描けない企業は、まだ手を出さなくても良いと思います。この技術が広く社会に普及するには、まだ時間がかかるでしょうから。
ただし、ある日そのキャズム(谷)を超えるときが来るはずです。それはインターネットなど、過去のイノベーションを見ても同様です。また、先ほど述べたように、ブロックチェーンの参入障壁や技術の難易度は高いため、ある程度準備しておかないと致命的に乗り遅れる可能性があります。そのため、ブロックチェーンに取り組まないとしても、動向は見続けておいた方がベターでしょう。
一方、ブロックチェーンを扱う側が、安易なゲインをつくったり、信頼を損なうような行為をしないことも大切です。そういった意味では、扱う企業のリテラシーも、ブロックチェーン普及の行方を握っています。
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