約300人が来場したARコミュニティイベント「ARISE #1」--最新MRデバイス体験も - (page 2)

AR業界で熱視線を浴びる「nreal.ltd」が来日

 当イベントの目玉企画の1つとして注目を浴びていたのが、中国のハードウェアスタートアップ「nreal.ltd」メンバーの来日だ。AR業界で期待が集まるMRデバイスnreal lightについて、彼らの口から紹介された。

 まず登場したのは、同社のvice presidentを務めるJoshua Yeo氏。「未来を再現した映画に登場するものと言ったら、MRデバイス。nreal lightは未来の世界を再現できる機能を実装している。我々は、皆さんと一緒にMR未来の扉を開けたい」と日本語で意気込みを語った。

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nreal.ltdでvice presidentを務めるJoshua Yeo氏

 続いてはプロダクトマネージャーのWei Lv氏が登壇。nreal lightの機能に加え、開発者向けのNRSDKの紹介、NRSDKを使ったアプリ開発、nrealデベロッパープログラムなどについて紹介した。

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同社プロダクトマネージャーのWei Lv氏

 軽量で快適な使い心地、ファッショナブルなデザインを追求して生まれたというnreal light。重さはわずか88gで52度の視野角を持つ。USB Type-Cを使って、Snapdragon 855を搭載したAndroidスマートフォンのほか、Windows搭載のPCや専用のコンピューティングユニット(Snapdragon 845を搭載)とも接続できる。モバイルARアプリ、MRアプリ、Androidアプリにも対応しているとのこと。 加えて、業界内に衝撃を与えたのは499ドルという価格。十分、一般消費者にも手が届く価格帯だ。

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 一足早く、9月から発売される開発者向けSDKについても説明があった。これはグラス本体に加えて、コンピューティングユニットとコントローラーが付属したもので、価格は1199ドル。

 Wei氏は「nreal lightはクロスプラットフォームに対応しており、MRアプリ開発の複合現実プラットフォームとなる。nrealアプリケーションは人気の開発環境の多くに対応しており、まったく新しいMRエクスペリエンスを構築するほか、既存のコンテンツをMRで進化させることも叶う」とパワフルな機能について説明した。

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 NRSDKのベータ版は、こちらからダウンロードが可能。関連資料のチュートリアルも用意されている。

 最後にWei氏は「私たちがもっとも重要視しているのは、本日お越しいただいたデベロッパーの皆さんであり、多くのフィードバックをお待ちしている。Nreal.ltdはオープンなプラットフォームであり、たくさんのコラボレーションを歓迎している」とメッセージを述べた。

建築家・豊田氏×エンハンス・水口氏「2025大阪万博は挑戦」

 Nreal.ltdに続き、スペシャルセッションのゲストとして登壇したのが、デジタル技術を使った建築に注力する建築家の豊田啓介氏と、XR技術と共に共感覚的な新しい体験創造を追求するエンハンスの水口哲也氏。1時間におよんだ同セッションは、豊田氏が提唱する「コモン・グラウンド」の概念から始まり、2025年に開催される大阪万博への志気で締めくくられた。

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エンハンスの水口哲也氏(左)と建築家の豊田啓介氏(右)

 冒頭で水口氏は、「今の2Dメディアの時代は500〜600年続いてきたと思うが、人間にとって実は2D表現がもっとも不自然な形だった。僕らは3Dの中で生きていて、すべてを3Dで感じているのに、ずいぶん面倒なことになってしまったなと。それがVRで復権できて、ようやくARで現実世界にシンセサイズできるようになった。これは600年ぶりの大変換だと思う」とXRがもたらした革命について触れた。

 この言葉を受けて豊田氏は、「XRの出現にともない、建築のあり方も変わっていくべきだと考える。私がよく言う『コモン・グラウンド』とは、街のデータをデジタル記述した都市のコピーに、AIやロボット、自立走行マシンといったデジタルエージェントに現実世界を認識させる仕組みを取り込むことを指す。そうすることで、人とロボットが協働する都市を作りたいと考えている」と語った。

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 また、「AR業界の未来」についても話題がふくらんだ。「nreal light やMagic Leap OneなどのARグラスをかけて歩く時代が10年後には到来しているはずで、そうすると映像作家のKeiichi Matsuda氏が制作した動画『HYPER-REALITY』のような世界観が現実味を帯びてくる」(水口氏)

 豊田氏が「この世界が実現すれば、渋谷なのにジャングルだったり、ドラクエの世界だったり、という空間演出ができるようになる。この体験を2025年の大阪万博で提供したい」と話すと、ここから話題は大阪万博へ。

 「6年後ってARISE的にもすごくおもしろいタイミングだし、大阪万博は壮大な実験ができる場になる」(水口氏)。

 「歩き回れる従来の会場以外にバーチャル会場、オンライン上の会場と3種類の体験ができるとか。チケットの種類も一般だけじゃなく、例えば2時間だけ自分の身体を海外の子どもに提供すると、その子が自分の身体に乗り移って回れる割引チケットを用意してもいい。そういう仕組みが無限に作れる」(豊田氏)。

 とはいえ、まだ誰も到達していないであろう新時代の体験を提供するのは容易ではない。挑戦を阻害する要素は、一体どこにあるのだろうか。「私は大阪万博の誘致に携わっているが、会期が近づくほど失敗を恐れて、関係者は安全策に逃げがちになる。今お伝えしたようなまったく新しい取り組みを盛り込むとしたら、今年いっぱいだろう。期待はずれのイベントにだけはしたくない」(豊田氏)。

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 「大阪万博という最高のステージで勝負を仕掛けられるかどうかで、その先の日本の未来が変わるかもしれない」(水口氏)。

 最後に両名は「開発者の皆さんは、どんどん開発を進めていただき、発信して声を上げていってほしい。ARISEのメンバーとも積極的に関わって、AR業界を一緒に盛り上げてほしい」と来場者へ呼びかけた。

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