スイスの国営郵便会社Swiss Postは、病院間での検査用サンプル輸送にドローンを利用していたが、5月に墜落事故を起こし、現在ドローンによる輸送業務を中断している。
Swiss Postは、荷物運搬用ドローンを手がける米Matternetの開発したクアッドコプターを使用し、医療サンプルの輸送サービスを運営。輸送に使うドローンは、ローターブレードを除いたサイズは直径80cmで、最大2kgの荷物を20km運べるという。安全対策として、自律飛行システムや各種センサを二重化。さらに、電力喪失時には、パラシュートが自動的に開く仕組み。Matternetは、米運送大手のUnited Parcel Service of America(UPS)向けにもドローンを提供している。
問題の事故が発生したのは5月9日。荷物を輸送中のドローンがチューリッヒの森に墜落したという。幸いなことに、負傷者など人的被害は発生しなかった。この件に関し、Matternetはウェブサイトに情報を掲載していない。
米国電気電子学会(IEEE)によると、事故を起こしたドローンは、何らかの原因で問題が発生したため、離陸から2分後に非常用パラシュートを展開。これで安全に地上へ到達するはずだったのだが、本体とパラシュートを結びつけている1本しかない“ひも”がドローンのどこか鋭利な部分に接触して切れ、墜落したという。総重量が10kgを超えていたドローンはコントロールを完全に失い、幼稚園の子どもたちが遊んでいた森に落ちた。距離は50ヤード(約46m)しか離れていなかったそうだ。
IEEEによると、5月の墜落は2回目のトラブル。2018年1月には、制御回路でショートが発生してGPSモジュールに供給されていた電力が断たれた。このときは、緊急システムがうまく作動し、パラシュートを使って安全に降下したという。
5月の事故を受け、Swiss PostはMatternetに対し、パラシュートのひもを強化、ひもを2本に増加、緊急着陸時の警告音の音量拡大、といった安全強化策を実施するよう要請した。また、飛行条件を見直し、以前よりも弱い風でも飛行を中止するとしている。
なお、Swiss Postは事故原因の調査と対策の検討を継続中で、サービス再開の目処は立っていない。
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