データの力で毎日の食事から健康を目指す「SIRU+」--無理せずに栄養可視化 - (page 2)

阿久津良和 別井貴志 (編集部)2019年07月26日 13時36分

――マネタイズについてもお聞かせください。

 先ほどメーカーのおすすめ商品が現れると説明しましたが、このレコメンド広告は全員に提示されるものではなく、たとえばタンパク質が足りない方には、簡単かつ容易にタンパク質を摂取できるカップスープなど、関連商品を提示するターゲティングを行います。ユーザーは、自分にとって必要な栄養が補える商品を知ることができます。食品メーカーとしてもタンパク質が足りていない人にタンパク質を補給する商品をおすすめできます。両者の課題を補うことでマネタイズを行っています。

 「SIRU+」を運営することで我々の元には「POS(販売時点情報管理)」「ユーザー属性」「栄養状態」「ユーザーの嗜好性」といった4つのデータが集まります。流通や食品メーカーは分析データを通じて、栄養セグメント別のレコメンドやマーケティング、商品開発支援が可能になるでしょう。たとえば任意の地域は鉄分が足りない人が多いため、特化した商品開発を行えます。我々はヘルスケア企業を目指していますので、食事データを必要とする保険や病院など第3者企業との連携も可能だと考えました。これらの背景には膨大なデータが必要になりますので、流通との連携を優先的に進めており、現状ではダイエーに試験導入いただいています。

――その点ですが、よく流通を口説き落とせましたね。

 一般的に流通が購買データを他社に提供することは珍しいことです。今にして思えば、運が良かったのかもしれませんね。流通全体でデジタルを強化している追い風と、スーパーマーケットは地域に対する食品の供給源という意識が強く、地域の健康に寄与したいという思いが合致したんだと思います。

――大企業の新規事業創出を取材してきましたが、スタートアップは門前払いされるのも多いです。

 ちょうど会社員時代の上司が某流通の取締役で、彼に起業する話はしていましたから、関係者の紹介をお願いしました。するととんとん拍子で話が進み、2~3回目のプレゼンテーションでは、某流通の常務さんにお目にかかり、「面白い、やろうよ」と言っていただいた次第です。

 相談時は起業前なので、当初は共同開発という形を取りました。半年以上かけて作った試作アプリは、購買食品の識別や量の数値化という壁で頓挫し、プロジェクトは解散しました。しかし、その後も弊社のみで開発を続けて現在の形に至ります。

――今後は展開をお聞かせください。「SIRU+」は特定の流通で利用が可能というわけではありませんよね。

 もちろんです。多くの方が複数スーパーで買い物をされているので、すべてのスーパーで対応できることを目指しています。あとお話したいのが「SIRU+」開発の恩人です。宮崎県のみで展開する「マルイチ」というスーパーマーケットがあり、開発過程で実験にお付き合いいただきました。ゼロの状態から応援していただき、完成したら「うちの店で実験していいよ」と。

 マルイチの社長さんとは、流通回りにヒアリングを重ねている際に紹介していただき、会って10分もせずにアイデアを説明したところ、流通側の視点でさまざまなアドバイスをいただきました。彼がいなかったら「SIRU+」は生まれなかったかもしれません。ある意味エンジェルですね。

 短期目標ですが、データのインプット量を増やすこと。カードの種類やQRコード決済で拡大させますが、もう1つは外食への対応するための開発を続けています。「SIRU+」のデータベースは世帯と言いながらも個人に紐付いた栄養素データを格納していますので、外食対応時は個人用入力UIを用意することも想定しています。

 中期的には多方面との連携ですね。メーカー側のターゲティングもありますし、ユーザー側も自分の栄養状態に合わせて、産直ECなどさまざまなチャンネルから食材の購入を可能にしたいと考えています。さらに先を見据えますと、弊社のデータベースにあるユーザーの健康データを健康診断や血液検査結果と合致させ、購入傾向から体調を推測するといった活動を大学やメーカーなどと協働できれば、保険や医療との連携も可能になるでしょう。

「短期的にはデータのインプット量を増やすこと。中期的には多方面との連携を目標とする」と小原氏
「短期的にはデータのインプット量を増やすこと。中期的には多方面との連携を目標とする」と小原氏

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