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“中華圏”で活躍できる日本人のロールモデルに--深センにたどりついた究極のジョブホッパー - (page 2)

藤井涼 (編集部)2019年07月27日 08時00分
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ドローンと出会い「深セン」へ

 中国でのバックパッカー・留学・就労経験を持ち、中国語ができる日本人として、どこまで挑戦できるのかを知りたい。それだけは心に決めていたが、そのために何をすればいいのかは定まっていなかった。そこで、現地のゲストハウスのフロントの仕事を見つけ、住み込みスタッフとして寝泊まりしながらバックパッカーたちから情報を集めたり、様々なイベントやセミナーに参加したりして台湾の産業やビジネス事情などを学ぶ日々を過ごした。

 時々、現地の展示会などにも足を運んでいたが、そこで運命の出会いとなったのがドローン。2015年当時はまだ“おもちゃレベル”なドローンが多かったが「人間の知覚を拡張させ、空間価値を高める技術として、すごく可能性を感じた」と川ノ上氏は振り返る。まだ日本語のドローンの情報がほとんどなく、日本と中国で産業の情報ギャップがあることに気づいた同氏は、同年6月に数年ぶりに深センに行き、現地のドローンイベントに参加したのだという。

 そこで目の当たりにしたのは、おもちゃとは程遠い巨大なドローンの数々。この産業は注目すべきだと感じ、現地で得た情報をFacebookなどで日本語で発信してみたところ、ドローンに関心を持つ日本のアーリーアダプターたちから連絡をもらうようになった。そこで、まずは少人数の顔見知りを中心に、深センで日中のドローン関係者を集めての交流会を含むツアーを企画し、自身でナビゲーターと通訳をしたという。

2015年に参加した深圳のドローンイベント
2015年に参加した深圳のドローンイベント

 これが好評だったことから、本格的に深センに拠点を移し、日本と中華圏のドローン産業関係者をつなぐイベントを企画したり、産業ツアーを企画運営したりする会社である「xyZing(エクサイジング、中国名:翼彩創新)」を2017年に創業した。現在は、深センや近郊の都市を含むベイエリア圏を中心に、産官学や起業家コミュニティのネットワーク開拓、国際連携のニーズ把握などを進めており、日本企業との橋渡しや、その後の事業開発のサポートなどをしているという。

 さらに、ドローン産業視察ツアーでの出会いが発端となり、2019年5月には、ドローンの安定飛行を実現する重心制御技術「4D GRAVITY」を独自開発する日本発スタートアップであるエアロネクストの深セン拠点代表(総経理)に就任。同技術のライセンスビジネスをグローバルに展開していくために、深センを軸とした中国の活用基盤を構築していく予定だ。

ドローン重心制御技術のエアロネクストの深セン拠点の代表に
ドローン重心制御技術のエアロネクストの深セン拠点の代表に

 具体的には、これまでのドローンではできなかった“空飛ぶロボット”としての市場を創出するため、物流や点検、さらに全く新しい領域も含め様々な企業と連携し、ユースケースを作っていきたいとしている。加えて、現地の研究機関などと協業体制を構築し、技術の定量化検証をする仕組みも構築していく計画だという。

「開拓者」であり続ける

 ドローンビジネスに可能性を感じたことをきっかけに、世界最大のドローンメーカーDJIの本社がある深センに拠点を移した川ノ上氏だが、過去にそれぞれ1年以上暮らしていた北京、上海、台湾と比べても、深センは最も面白い都市だと言い切る。

 「深センという場所に固執している人が少ない。タイミングや自身の強みを考え、ここなら稼げる、挑戦する価値がある、チャンスを掴みに来たという人々が集まっている。平均年齢も32歳のため、若いうちからメガベンチャーで重要な意思決定ができるし、スピンアウトする年齢も若い。いい経験をしてから起業している人が多いため、起業したビジネスもドライブがかりやすい」(川ノ上氏)。

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テンセントやDJIなども本社を置く深セン

 一方で、深センに対して強いこだわりはないとも話す。「もともと中国という国家主体に特別な愛着を持っているわけではなく、中国を含む中華経済に興味がある。華僑・華人は世界中に約4000万人いると言われ、彼らの種としてのコミュニティが大きい。その“ファミリー”の一員として共に成長し合える関係でありたい」(川ノ上氏)。

 最近は、中国や中華経済視点では、欧州やアフリカはどのように見えるのかを知りたいと思うようになり、中国国内だけでなく、欧州で開催されるイベントなどにもフットワーク軽く参加しているそうだ。

 今後の人生についてはどう考えているのか。川ノ上氏は、特に決まっていることはないと前置きしながらも、2つの大きな軸は変わらないと話す。1つ目は「エクスプローラー(探検者)」であり続けること。バックパッカーだった頃のように、現場に行って自らの目で感じ、考え、確かめることを大切にしたいと考えている。

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6月に上海で開催された「CES Asia 2019」でのプレゼンの様子
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「CES Asia 2019」でドローンをテーマに登壇

 2つ目が「アグリゲーター(Aggregator=集約者)」。自分の目で見て、体験するだけでなく、その経験を生かして、高い視座、広い視野、独自性のある視点で構想し、様々な情報や人をつなぎあわせ、新たな事業、市場、産業を作っていきたいと話す。

 たとえば、ある日本企業が深センに進出したいと考えても、自分たちだけで現地でパートナーを見つけ、ビジネスを生み出すのは容易ではなく、時間も手間もかかる。そこに対して、川ノ上氏の知見やネットワークを生かすことで、現地に根ざし、現地のリソースを活用したトライ&エラーができる環境を構築でき、事業を加速できるというわけだ。

 紆余曲折ありながらも、中華圏を中心にジョブホッパーを続けながら、深センにたどりついた川ノ上氏。「中華圏に軸足を置き、中国語(と英語)が使える日本人が様々なグローバルシーンで存在感を示し、新たな事業を切り開いていく事例を増やす。そのモデルケースになりたい」と話す同氏が、“中華圏で活躍する日本人”の1人として、多くの人々に知られるようになる日が来るのが楽しみだ。

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