人気の完全ワイヤレスイヤホンに“小ささ”を追求した新モデルが登場した。手がけたのは、通信キャリアなどで携帯電話やスマートフォン、その周辺機器などの企画開発をしていた岡田英之氏。プロダクトデザインを担うBATTLES DESIGNとともに、片耳わずか1.3g、耳栓より小さな完全ワイヤレスイヤホン「GRAIN(グレイン)」を作り上げ、現在、GREEN FUNDING by T-SITE - でクラウドファンディングを実施している。
「今、一番身近で誰でも持っているものはスマートフォン。しかしスマホは作れない。そこで、スマホで使う身近なものを作りたいと思った」と岡田氏はGRAINの開発背景を話す。「iPhoneからイヤホンジャックがなくなり、一斉にイヤホンがワイヤレス化する。その極みを考えると、やはり小ささだろうと。今のイヤホンは完全ワイヤレスになってもまだ大きい。これでは小さいとは言えないと思った」と振り返る。
岡田氏は、これまで販売されているワイヤレスイヤホン約200種類以上を購入。徹底的に研究した。そこで目をつけたのが電池のサイズだ。電池のサイズは、50mAh前後あり、イヤホンがそれ以上大きくなってしまうのは当然。そこで、岡田氏は19mAhの医療用向け充電池を採用。大幅な小型化に結びつけた。
「補聴器などに使用されている医療用電池は、小さい分コストが高い。生産量も限られており、入手は困難だったが、なんとか交渉して、開発にこぎつけた」(岡田氏)と言う。再生時間はイヤホン本体のみで最大約3時間、充電ケースと合わせて約7.5時間を実現している。
GRAINは開発工程の多くにおいて、今までにないチャレンジがちりばめられている。電池以外にも、スピーカー、基板といずれも新規に設計、開発したもの。「電池、基板、充電機能をイヤホンに設置すると、満杯になってしまってドライバを入れられる場所はわずかしか残らなかった。その部分に収まるスピーカーが見つからなかったので、世界で一番小さいであろう直径約4mmの超小型マイクロスピーカーを作った」と岡田氏は話す。
ただし、コストは度外視している。イヤホン本体の電池は日本製、充電ケースの電池はドイツ製を採用しているため、割高になってしまっている。また、部品の開発、製造、組立を請け負う会社も、このサイズ感は初めての経験。「諦めずに、ある意味しつこく交渉し続けることで作れた作品」(岡田氏)と苦労は絶えない。
企画から、クラウドファンディング実施までの期間はおよそ1年半。その多くの期間は電池の確保に費やしたという。「GRAINは、クラウドファンディングだからこそできたモデル。通常のワイヤレスイヤホンは厳密なコスト管理のもと製造されるため、ここまでのコストはかけられない。クラウドファンディングがなければ100%実現し得なかったプロジェクト」と岡田氏は現状を説明する。
また、販売するための広告や流通、物流の確保を自社で請け負うことはコストや人手の面からも難しく、「スタートアップが販売できる最適かつ最短の仕組みがクラウドファンディング」とした。
その小ささに目を奪われるが、イヤーピースは、ガラスと同等の透明度を持つクリアなものを使用したり、イヤホン本体を取り出しやすくするために、充電ケースを開けるとイヤホン本体が自動的に持ち上がるよう独自機構を取り入れたりと、そのこだわりは細部に渡る。米クアルコム製の最新Bluetooth「QCC3026」を搭載するなど、最先端のスペックも備えた。
超小型イヤホンを作り上げた実績で、次に見据えるのは、次世代のヒアラブルだ。「競争が激しい市場で、新しいことをやらないと生き残れない。それはイヤホンのスピーカーや基板を作る部品会社も同じこと。イヤホンだけではない、ヒアラブルの新しい価値を確立したい、AIを搭載したより生活を便利にする事を目指したい」と岡田氏は今後の展望を話した。
GRAINは、目標金額1000万円で、8月30日まで支援を受け付ける。限定300個のSuper Early Birdが1万9800円、限定500個のEarly Birdが2万800円、限定800個のValue Plusが2万1800円、STANDARDが2万7200円になる。
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