こんなシナリオはどうだろうか。ここは10年後の世界。あなたが通りを歩いていると、5ポンド(約2.3kg)の荷物を運んでいる配送ドローンが不具合を起こす。頭上から聞こえていた機械音の高さが1オクターブ上がり、見上げると、この飛翔物が落ちてくるのは明らかだ。
これは必然的に起こりうるシナリオだ。商用ドローンが現実のものとなりつつある中、ドローンの安全性という問題に対する認識が高まり、緊急性も増している。これは多元的な課題で、航空交通管制や通信プロトコルのほか、無人の物体を安全上の大きな問題なく数千回も空中に飛ばす際に起こる、幾多の厳しい現実が関わってくる。しかし、最大の懸念は、これらの物体が空から落ちてきて、無防備な歩行者が負傷したり死亡したりしてしまうおそれがあることだ。
ソフトウェアで緊急着陸の対策を施せば衝突を緩和する助けになるし、商用ドローンの多くは予備のプロペラを搭載している。しかし、商用ドローンに最適な不朽の安全技術が1700年代からある。パラシュートだ。
商用ドローン業界はつぎはぎだらけの国際規制と戦っているが、この業界でも認証機関がいくつか設立されている。その1つ、Northeast UAS Airspace Integration Research(NUAIR)は、ニューヨークに拠点を置く非営利の官民事業体連合だ。コンサルティングやテストを行うほか、ドローンのパラシュートシステムに認証を与えている。
イスラエルのドローン企業Flytrexは、厳格なテストを経てNUAIRから待望の認証を受けたばかりだ。その共同創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるYariv Bash氏は、次のように述べている。「商用ドローンの運用について言えば、安全性は最大の優先事項でなければならない。われわれがDrone Rescue Systems(DRS)社と協力することにしたのは、同社が頭上を飛ぶドローンを安全に保つための専門家であるからだけでなく、最高の安全基準を守ることで商用ドローンを有効な選択肢にするという同じビジョンを共有しているからだ。世界初のパラシュートによる墜落回避システムの認証テストを管理してきたNUAIRの優れた実績によって、これらのテストに対するわれわれの信頼は高まった」
NUAIRは、テストを実施することで、商用利用の解禁に必要なデータと規格をドローン業界に提供したいと考えている。また、商用ドローンによる配送が米国で始まった際に、主要な認証サービスになりたいとも願っている。ほとんどの専門家は、米国で商用ドローンでの配送が始まるのは、可能性の問題ではなく時間の問題だと考えている。
NUAIRの所在地には戦略的な重要性がある。ニューヨーク州知事のAndrew M. Cuomo氏は先ごろ、「Central New York(CNY)Rising」という取り組みの一環として、成長中の無人航空機システム(UAS)産業を発展させるために、3000万ドル(約32億5300万円)を投じて、シラキューズ・ハンコック国際空港とニューヨーク州ロームにあるグリフィス国際空港との間に、50マイル(約80km)のUAS飛行管理ゾーンを設けると発表した。これにより、ニューヨーク州とNUAIRは、前進への道を連邦規制当局が見つけ出すのをまだ待っている業界の最前線に立つ。
米連邦航空局(FAA)は現在、大半のドローンが人の真上を飛行することを禁じている。ドローン運営業者は、認証済みパラシュートの搭載など、強力な安全措置を取っていることを証明できれば、特定の使用事例でそうした制限の免除を申請できる。
Flytrexの認証は、NUAIRが2番目に実施したパラシュート規格の認証だった。Flytrexのパラシュートは、地上にいる人々に被害を与えるリスクを減らすためにDRSによって開発されたものだ。緊急時には数ミリ秒でパラシュートが開き、システムを再装填してドローンを再び飛ばすのに数分しかかからない。システムには、追跡可能な「ブラックボックス」も搭載されており、ドローンを回収したらすぐ活用にいかせるデータを分析できる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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