SBドライブは7月3日、「ハンドルがない自律走行バス」の公道走行実験を報道機関に公開した。同社によれば、一般車両の進入を制限して専用空間にすることなく公道を走行する実験は国内初。また、関係者向けの体験乗車も併せて実施された。
SBドライブでは自動運転の実用化に向けて、さまざまな地域で実証実験を重ねている。今回披露されたのは、フランス・Navya社製のバス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を用いての自動運転の様子。東京・汐留のイタリア街に設定した約300mのコースを時速15km程度で実際に走行させた。周辺にはオフィス・飲食店・ホテルなどが立ち並び、国道ほどではないものの車・歩行者がひっきりなしに行き交うエリアである。また、コース内に一般車両が侵入することも特に禁止されていない。
SBドライブ 代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏からは、今回の走行実証にあたってのポイントが解説された。まずNAVYA ARMAはフランスの製品ということもあり、日本国内法に適合させるための各種改造を行った。NAVYA ARMAには運転席の概念がそもそもないが、日本の保安基準に適合させるため、これを明確に設定。ハンドルについても、ゲーム機用のコントローラーで代替した。
また、走行実証では運転手も搭乗するが、あくまで緊急時の対応要員のため、コントローラー操作は基本的に行わない。このほか、地元の警察・自治体とも連携し、道路使用などの許可を得ているが、あくまでも走行は実験であり、走行時間帯などが制限されている。
筆者も実際に自動運転バスに搭乗した。NAVYA ARMAは全長4.76m、全幅2.11m、全高2.65m、車両重量2470kg、定員11名(運転手含む)。外装部には各種センサー類が設定されているが、デザイン的に特別な部分は少なめ。「自動運転 公道実証実験 実施中」のステッカーくらいしか、自動運転車であることを判別するための材料はない。
シートはごく簡素で、ロープウェーのゴンドラのように向かい合わせて配置されている。なお時速19km以下の低速走行しか行わないため、シートベルトも用意されていない。
運転のスタートは、バスに設置されたタッチパネルで行う。あとは運転手の操作はほぼ不要。それ以外はごく普通の乗車感覚なのがなんとも不思議だ。
当然ながら一時停止も自動。優先道路にぶつかる前の一時停止線をしっかり判別し、路側帯をまたぐ前にも一時停止する。ただ、停止がやや急な印象で、もし立っているときは手すりにしっかりつかまる必要がありそうだ(なお、今回の実証実験においては、立ったままの乗車は禁止されている)。
直進路では、対向車とすれ違う場面もあった。それ自体は特別なことではないが、やはり自動運転の車でとなると驚きを覚える。対向車側のドライバーは、恐らく「今向き合っている車が自動運転車かどうか」を意識せず、普通にすれ違っていたのではないかと思われる。
右左折もスムーズ。今回設定されたコース内に信号はないが、対向車や周辺の歩行者をしっかり判別しつつ進行。およそ4分ほどの体験乗車はトラブルなく終わった。
続いて、自動運転の様子を路上からも見学したが、やはり印象的だったのが歩行者を判別しての停止だ。横断歩道や交差点の周辺に歩行者がいると、NAVYA ARMAはしっかりと停車。そして歩行者側が「止まってくれたんだな」と感じて、ごく自然に歩き出す光景が何度も見られた。
今回の実証実験は、平日の日中・曇天、かつ走行時速もおおむね15kmという限られたシチュエーションではあるが、それでも一般車・歩行者が周りにいる中で、これだけのレベルで自動走行できる事に驚かされた。
SBドライブでは、政府が掲げる「無人自動運転移動サービスの2020年実用化」にむけて、サービスの開発を進めていく計画。今後、さらに体験乗車の機会が増えることに期待したい。
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