オプテージがデータ利活用を基盤としたスマートシティの実現に向け動きを加速している。6月29日に大阪で開催された「Super City Smart City Forum 2019」の展示コーナーに出展。関西電力によるエネルギー事業と、関電グループにおける情報通信及びSI事業を手掛けているオプテージとの強みを掛け合わせ、ICT、AIなどを駆使したスマートシティ構築を目指す。
オプテージ 経営本部経営戦略部経営企画チームシニアマネージャー 村主隆彦氏に、大阪・関西万博やうめきた2期など関西の大型プロジェクトを見据えたスマートシティの取り組みについて聞いた。
オプテージは、関西電力グループの一員として、電気通信、有線放送、情報システム開発などを手がけ、FTTHサービス「eo光」や格安スマホサービス「mineo(マイネオ)」の提供会社としても知られる。1988年に設立し、ケイ・オプティコムとして運営してきたが、4月に事業再編しオプテージへと社名を改めた。
「少子高齢化や都市部への人口集中など、街を取り巻く環境は大きく変化している。40〜50年前に作られた住宅地は、坂道が多く、住民が高齢化した今では、買い物に行くことさえ困難な”オールドニュータウン”になった。一方、都市部では人口集中による交通渋滞の解消やエネルギーの効率的な運用などが求められている。こうした課題を解決するためには、ICTやIoTの技術が必要不可欠」と村主氏は話す。
関西電力グループでは15年ほど前からスマートシティに関連する取り組みを開始。関西全域に電気の供給網を持つため、インフラ整備の観点からも、親和性は高い。加えて、3月に発表した中期経営計画で、電力だけでなく、医療や農業、食料、エンターテインメントといった新領域への拡大と挑戦を掲げ、関西電力の社内に「イノベーションラボ」を新設。ベンチャー企業との積極的な連携を打ち出した。
「スマートシティへの取り組みは、ベンチャー企業と連携することで、大きく進展する。私たちが持つデータを、どうやって取得、集約、分析、活用するかは、いろいろな方法があるが、ベンチャー企業が持つサービスや機器を掛け合わせることによって、思わぬ効果を生み出せる」と村主氏は事例を挙げる。
人の流れがわかる「人流センサー」は神戸発ベンチャー企業のセンサーズ・アンド・ワークスによるもの。すでに神戸市三宮の周辺150カ所の街灯などに設置することで、人の数や歩く方向などをリアルタイムに把握する。
モビリティの視点からは、テラドローンの自動搬送車「Drone」を利用する。これは坂道の多いニュータウンに日用品や食料などを届ける宅配としての活用を見据える。また、都市部においても渋滞緩和や利便性確保を視野に検討を進めている。本体には赤外線センサーと光学センサーを搭載し、障害物や道幅などを読み取る。40kg程度のものであれば、自動運転で運べる。
中国ではすでに実用化しており、血液や医薬品などの宅配に使用。ドローンと組み合わせることで、陸空をまたいで、短時間かつ最短距離で商品を届ける。
「IoTやAIを使った新技術を習得するには時間がかかる。そういう技術をすでに持っているベンチャー企業の方と一緒にやったほうが早い。私たちには、電気や通信網というインフラを持ち、それを活用したデータ取得ができる。さらに資金面でのサポートも考えられる。お互いが持っていないリソースを持ち寄ることによって、新たな技術やサービスを生み出せる」とベンチャー企業と組む目的は明確だ。
新たな技術やサービスを持つベンチャー企業には常にアンテナを張っている。「マッチングイベントにはできる限り参加しているし、人を介して紹介もしてもらっている。ここぞと思うベンチャーには、飛び込みでお話をしにいくケースもある」と手を尽くす。「なかでも、一番いいのは人とのつながり。サービス系のベンチャーの方から、プロダクト関連のベンチャーの方を紹介いただくなど、数珠つなぎにつながっていける」(村主氏)と、体験談を話す。
データ、サービス、機器とスマートシティ化に向け、着々と取り組みを進めているが、現在のハードルは規制だ。プライバシーの観点から、カメラでの撮影は防犯目的に限られ、データとしての取得は不可。個人として特定できないようなデータ加工が求められる。「プライバシーを保護しながら、必要なデータはきちんと取得できるような仕組みづくりが大事」と村主氏は今後を見据える。
一方で、スマートシティ事業は、収益化についても未知数だ。「実験段階のものが多く、今すぐ収益に結びつくような事業ではない。また、実用化段階にあっても、多くの人が関わる街基点のため、誰がその費用を負担するのかは、不透明なケースが多い。例えば人流センサーで取得した人の数、流れのデータを今の交通量調査に置き換えるなど、サービスや機器の一部を、今ある仕事に置き換えることで、少しずつ収益化に結びつけていきたい」(村主氏)と、今後の展開を慎重に見据える。
「ニュータウンに小型のバスを運行することは、住民にとって利便性につながるが、バスの運転手不足は深刻な問題。ならば、人件費がかからない自動運転にすればいいが、それだけでは利益が出にくい。しかしそこに宅配という要素が加われば、利益も確保しやすいかもしれない。1つの事例だけで収益化するのが難しくとも、少しずつ掛け合わせることで、回収できるようなそんなビジネスモデルを築いていきたい」と、あらゆる角度から、収益化を検証する。
村主氏がスマートシシティ化への取り組みを話す中で繰り返すのは「1社ではできない」ということ。街づくりは面積が極めて広く、サービス内容も多様。「競争ではなくて共創」と、各社が手を組む方針を強く推奨する。
パートナーシップは企業間に留まらない。「スマートシティ計画は、総務省、国土交通省、経済産業省の3省が連携し、それを内閣府が取りまとめている。官公庁同士、官民の連携がなければ、スマートシティ構想は実現しない。加えて、ベンチャーとのサポート体制も必須」と言い切る。
直近の目標は、大阪万博が開催される2025年。ここを1つのめどとして、スマートシティ構想の実用化を進める。「官公庁でも、スマートシティ化を見据え、実証実験などを数多くできる環境を整えている。ここい積極的に参加し、実力をつけて、大きなプロジェクトに参画していきたい」と、村主氏は今後について話した。
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