同社の創業者である西木戸氏は、もともとDJとして音楽フェスなどを運営していた音楽家。フェス運営や芸術祭などの手伝いをする一環で、参加者のチケットやバスの手配、宿泊予約などの代行をしていたが、そこで目の当たりにしたのが「地方などのイベントに参加したいけれど、移動手段がないので参加できない、交通手段も限られている」といった、移動に対する“苦痛”を多くの人が感じていたことだった。
一方で日本の交通、特にイベントでの利用が多いバスに目を向けると、日本国内には約4500社の貸切バス会社があり、約5万台の貸切バスがあるという。国内の貸切バスの年間乗車人数は3億3000万人で飛行機の約3倍とも言われている。しかし、そのうちの7割が小規模事業者で、赤字率も4割におよぶ。年間の貸切バスの実働率は48%に留まっており、まだまだ非効率な状況だと西木戸氏は指摘する。
こうした現状を変えるために、同氏は2018年4月に、運転手付き貸切バスの予約サービスである「busmarket(バスマーケット)」を開始した。従来のように、各バス会社に問い合わせをしたり、それぞれ異なる料金に迷ったりすることなく、最適な価格で24時間いつでも貸切バスをオンラインで予約できるサービスだ。この1年ほどで、東急バスや京王バスなど242営業所と提携し、全国5万台のうち約8200台の貸切バスを押さえているという。
この次の展開として2019年4月に開始したのが、貸切バスツアーを誰でも実施できるbusketだ。これまで、個人が「歴史アイドルの古墳ツアー」や「通勤時間にバスで英会話教室」など、ニッチだけれど熱量の高い参加者が見込めそうなバスツアーを企画したとしても、旅行業の資格がなければ実施できず、旅行会社に頼むしかなかったため、気軽に企画するにはハードルが高かったと説明。
この運営まわりを同社がプラットフォーマーとして引き受けることで、ツアー企画の敷居を下げ、ユニークなアイデアや企画をどんどん世に出していきたいと西木戸氏は話す。また同時に、実働率が低いという貸切バスの課題も解決したいと意気込む。
「多くの人々の移動の問題を解決するには、ドライバーの課題も解決しなければいけない。誇りを持って働いている方は沢山いるが、いまバス会社は地場の中小企業が中心で赤字のところも多い。もし、その会社が潰れてしまったら地域の人たちは“足”がなくなってしまう。busketをドライバーも儲かる、喜ばれるサービスにしていきたい」(西木戸氏)。
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