ディー・エヌ・エー(DeNA)は5月10日、2019年3月期の通期連結決算を発表した。売上収益は1241億1600万円(前年同期比11.0%減)、営業利益は135億1200万円(同50.9%減)、当期利益は131億7700万円(同44.2%減)で減収減益となった。
四半期ベースでは、売上収益が295億円(前四半期比12%増)、営業利益(IFRS)が49億円。季節変動の大きいスポーツ事業を除く売上収益は272億円(同8%増)、Non-GAAP営業利益は76億円(同41%減)となっている。
同社の事業セグメントは、2019年3月期第3四半期までは、ゲーム事業、EC事業、スポーツ事業、新規事業・その他の4分野に区分していた。これを事業規模や経営戦略、会計基準に照らし、セグメント変更を実施。同第4四半期と通期においては、新規事業からオートモーティブ事業とヘルスケア事業に独立させた。2020年3月期以降は、EC事業を新規事業・その他の区分と統合する。
ディー・エヌ・エーで代表取締役社長兼CEOを務める守安功氏は、2019年度の方針として、ゲーム事業における健全な収益性の確保、柱の事業の一つとしてのスポーツ事業のさらなる発展、新たな柱の構築に向けた積極的な成長投資を挙げた。
ゲーム事業においては、中期の成長戦略として、IPホルダーとの関係性や中国市場における日系企業としての存在感、ゲームの運用力といった強みを軸に、大型IPの活用に重点を置いた新規ラインナップの形成や、グローバルでの配信の推進を掲げた。
この戦略の一環として守安氏は、ポケモンと協業したスマホアプリゲームの配信を予定していることを発表した。守安氏は、タイトルやリリース時期、配信エリアについては順次アナウンスすると詳細な説明は避けたものの、「われわれとしては非常に期待しているタイトルだ」とコメントした。
任天堂との協業による「マリオカート ツアー」も、2019年夏の配信を予定している。2019年度は、これら新規タイトルをヒットに繋げ、ゲーム事業を再成長させることを狙う。
ゲーム事業、スポーツ事業に加え、新たな収益の柱の構築を目指す同社。新規事業の成長投資については、2018年度の73億円から、100億円規模へ拡大。オートモーティブ事業とヘルスケア事業に継続して注力する。
オートモーティブ事業で特に注力するのは、タクシー配車アプリ「MOV」。リリース当初にサービス提供エリアだった神奈川県においては、参加事業者の総車両保有台数がエリア内1位となっている。しかし守安氏は、「競合との競争が激化しており、昨年度の会見時よりも収益化のイメージがずれている」と説明。「業者の確保などを当初予想以上に進めていかなければならない」との考えを示した。
今後は、神奈川県内では配車手数料、月額料、広告やAIサポートといった事業モデルの検証、確立を目指すほか、首都圏エリアや京阪神エリアでは、事業者での普及に向けた施策と投資に集中する。これらの施策により、2021年3月期の全国シェア1位達成を目指す。
また、個人間カーシェアサービス「Anyca」を、2019年4月に分社化。SOMPOホールディングスとの合弁会社であるDeNA SOMPO Mobilityに承継し、事業成長の加速を目指す。
ヘルスケア事業においては、朝日生命との協業を実施。健康レコメンデーションアプリ「KenCoM」を2020年3月期下期を目処に朝日生命の顧客へ提供するほか、2021年3月期以降にはヘルスケア型保険商品の共同開発・提供を予定する。
このほか、新たな取り組みとして、ファンドの設立を発表した。2019年夏の設立を予定しており、出資総額は約100億円。スタートアップ企業に対する投資のほか、ディー・エヌ・エー社員を含めた社内外の独立起業を支援するという。守安氏は、「創業以降『永久ベンチャー』を標榜してきた」とし、「新規事業については、さまざまなオプションがあってもいいのでは」と、設立に至る背景を語った。
ディー・エヌ・エーは、2020年3月期通期の業績予想については非開示とした。守安氏は、「業績においてゲーム事業の新規タイトルに期待するウェイトが大きく、合理的な数値の算出が困難なため」と説明した。セグメント別では、ゲーム事業においては既存タイトルのみに依存した場合、前期比で減収減益となる見通し。スポーツ事業は順調に推移しており、事業全体での増収増益を目指す。新規事業領域についても市場などの動向をふまえつつ適宜投資を進める。
また、今期は自社株式の取得にも着手する。機動的な資本政策の遂行や1株あたりの価値向上を目的としたもので、3800万株、総額500億円を上限に実施する。
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