クラウド・インベストメントが提供するオンラインファンド「FUEL(フエル)オンラインファンド」は、不動産のクラウドファンディングを新しい形で提供するサービスだ。現在、2019年夏のサービス開始を見据え、パートナー企業候補となる複数の不動産事業者や不動産ファンド事業者と協議中。同時にシステム基盤の整備を推進している。5月28日には、ソニーフィナンシャルベンチャーズが資金を拠出し、グローバル・ブレインが運営する「SFV・GB投資事業有限責任組合(SFV・GBファンド)」から資金調達を実施。経営陣、エンジニア、カスタマーサクセスなどの人材獲得を進める。
不動産のクラウドファンディングサービスは、ここ数年、複数の会社が参入している激戦区。その中において、後発で始める理由とは何か。また「かなり尖ったサービスに仕上がっている。この市場で面白いポジショニングがとれると思う」と語る、ユニークなサービス内容とはどんなものか、代表取締役の細澤聡希氏、徳毛雄一氏と取締役の小川喜之氏、執行役員の井上崇哉氏に聞いた。
クラウド・インベストメントは2016年10月に、細澤氏と徳毛氏が創業。2018年7月には、不動産賃貸やプロパティマネジメントなどを手がけるエー・ディー・ワークス(ADW)と業務提携し、現在、不動産テック事業者とのコラボレーションの場である「AD-O Tech Lab(エー・ディー・オーテックラボ)」の活用企業の1社として、ADWが渋谷に所有するビルの一角にオフィスを設けている。
事業内容は、クラウドファンディング事業のほか、システム開発やウェブサイトの運営など。不動産のクラウドファンディングサービスを手がける企業の多くが、不動産業を営んでいることを考えると、ユニークさが際立つ。
「当社は、クラウドファンディングの仕組みをパートナー企業向けに提供するプラットフォームとして機能し、私たちはウェブ事業者の立場。そのため、クラウドファンディングの機能を持ちたい大手不動産会社などと組み、お互いが得意とする役割を担うことで、すぐに不動産のクラウドファンディングを始められる」(細澤氏)と、特徴を話す。
クラウド・インベストメントでは、金融商品取引法の第二種金融商品取引業の登録に基づくサービスを提供する予定。「金融商品取引法のもとで、クラウドファンディング事業を始めようという事業者は多くはない。そのため参入障壁が高く、かなり尖った、面白いポジショニングが築けるはず」(細澤氏)と、独自性を強調する。
FUELオンラインファンドは、投資家と企業の資金調達ニーズをオンライン上で結びつけるプラットフォーム。このため、パートナー企業はクラウドファンディングのシステムを自社で構築、管理、運用する必要がなく、短期間でクラウドファンディングサービスをスタートできる。パートナー企業が複数にわたるため、投資家は1つのサービスサイトで登録すれば、ほかのサイトでも同様にクラウドファンディングサービスを利用でき、ユーザービリティにも優れる。
現在、井上氏が中心となってシステムを開発。一部を外注しているというが、サービス開始までには、すべてのシステムを内製できる体制を整える。「24時間365日対応が必要なので、内製は必須。特に投資という金融に関わるサービスなので、外部まかせという体制は考えていない。非常時でも即座に対応できることが、私たちに求められていることだと思う」(細澤氏)と自らの立ち位置を明確にする。
井上氏は「不正ログインやシステムのバグ部分については、特に注視して取り組んでいる。サイト上では現金を扱うわけではなく、投資家の入金データをシステム上に反映するため、その部分に問題があれば、投資家の損失につながる。そこを担保してシステムを運営していく体制にしている」と、万全を期する。
クラウド・インベストメントは、FUELオンラインファンドの導入費、システム利用費などが収益になるほか、1案件につき、運用期間中の運用残高に応じて報酬が発生する仕組み。
すでに大手不動産会社などがパートナー企業に名乗りをあげており、「ターゲットはある程度の規模を持つ企業。その企業が持つ信用度が、FUELオンラインファンドの信用をさらに強化していく」(細澤氏)と戦略を話す。
複数のパートナー企業と組むことについては「不動産でも会社によって得意なエリアやタイプがあり、賃貸物件に強かったり、オフィスビルに長けていたりする。その資金調達の手助けをしていきたい」(小川氏)と、プラットフォーム事業だからこそ、多彩な案件が用意できることをメリットに据える。
「今回の資金調達は、会社を強くするために行うもの。この分野で勝ち抜いていくための土台となるチームアップをしていきたい」と細澤氏。エンジニアのほか、マーケティング、カスタマーサクセスチーム、マーケティングなどの人材を強化する予定。「システムの内製化を進める上でエンジニアの獲得は必須。また不動産投資、クラウドファンディングのプラットフォーマーというサービス内容が複雑なため、FUELオンラインファンドの事業内容をきちんと伝えるカスタマーサクセスチームを置きたい。そうした専門家を社内に配置する必要があると思っている。当社はまだまだ小さい組織のため、ベンチャーマインドを持った方を積極的に採用していきたい」(細澤氏)と、人材不足は喫緊の課題だ。
細澤氏は「ゆくゆくは投資商品を扱う会社といえばFUELだと言われるようになりたい。この事業をやり続けることで資金調達のプラットフォームとしてのポジションを確立したい」と意気込む。小川氏も「オルタナティブな投資商品や金融商品をオンラインで提供していく、そこに圧倒的な強みと存在感を持つ会社にしたい。日本は投資に対して保守的な国で、ずっと銀行にお金を寝かせている人も多い。しかしお金は循環することで経済成長につながり、国が元気になる。良い金融商品を流通していくことで、この部分を変えていきたい」と続ける。
一方で、井上氏は「不動産のクラウドファンディングはフィンテック分野の1つと捉えられることもあるが、仮想通貨と違い若年層のプレーヤーが少ない。投資家も事業者も若い世代の人が増えていくようなサービスを作りたい。また、貯金を投資に回すといった知識がない人も多い。そうした人たちに対してアプローチすべきだと思っている」と掘り起こしたいターゲットを明確に示した。
不動産のクラウドファンディングは、注目が集まる一方、その内容に対して懐疑的な人もまだ多い。徳毛氏は「クラウドファンディングやオンライン投資を知らない人はまだ多い。そこに対してどう広めるかは大きな課題」と現状を冷静に分析しつつ、「個人投資家に加え、機関投資家にも使われるようなサービスにまで持っていきたい」と今後について話した。
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