2019年の春に、家庭用スタンドアロン型ヘッドセット「Oculus Quest」が発売される予定だ。米国では399ドル(日本では4万9800円)と手に届く価格であることから、VRの購入を前向きに検討している人も少なくないことだろう。
しかし、子どもがいる家庭では、新デバイスの性能情報と同じくらい、子どもの身体へ影響についても気になるところだ。同機種はすっぽりと頭にヘッドセットをかぶって視界もすべて遮ることから、とりわけ目への影響が懸念される。
筆者も購入を考えているが、もし子どもに遊ばせないほうが良いのなら、同じ空間で大人だけが楽しそうに遊んでいるのは不自然ではないか、その場合なんと説明したらよいのかなど、今までのゲーム機とは異なる点で気になることが多い。そこで発育段階である児童への影響と、子どもがいる家庭でVR機を購入する際の留意点について、専門家に意見を聞いた。
小児眼科医である大阪大学大学院医学系研究科・感覚機能形成学の不二門尚教授によると、「メーカーの基準にもある通り、7歳までは目の発達の重要な時期なので使用させない。また、12歳までの子どもについても、引き続き目の発達期であることに変わりはなので、使用は極力慎重にしたほうがいい」とのことだ。
不二門氏は官公庁(総務省・経済産業省)のVRに関する諸研究委員会に長年関わっているメンバーで、臨床の現場では主に子どもの斜視の治療をしてきた専門家の1人。同氏は「360度見渡すことのできる機種をはじめ、VRの性能は非常に高い水準に達してきている。今まで体験したことのない美しい世界やワクワクする世界が、ぎゅっとつまっている魅力的なモノだ」と評価する。
一方で、「家庭用に普及する過渡期だからこそ注意してほしいのは、身体への影響、特に子どもの目に関する影響についてきちんと知ること。保護者をはじめとする大人は、12歳までの子どもの目の成長に影響があることもきちんと認識して、責任感を持ってほしい。家庭で購入する場合は、実現が可能な使用ルールをあらかじめ話し合って、健康的に楽しむ環境を整えることが望ましい」と語る。
不二門氏は、2015年に「HMDのガイドライン 小児の輻輳・調節、眼球運動の発達の観点から」と題された講演で、3DテレビやVRHMDによる人工的な立体視について、視線の位置(輻輳)とピント(調節)が日常と一致しないことを問題点として挙げており、今回のOculus Questに対するコメントも、この研究内容が踏まえられている。
では、OculusはVRが与える子どもの目への影響についてどう考えているのだろうか。同社はすでに発売されている「Oculus Go」を例にコメントした。対象年齢については13歳以上となっており、それ以下の年齢の使用を禁止している。そのため全てのOculus製品では、13歳未満はアカウントを作成できないようになっているという。
「Oculusでは、仮想現実の世界で人々の安全を守ることを最優先としており、発売以来、当社製品に関する包括的な注意を促してきた。これはOculus Goでも変わらない。オンラインでの安全性について、専門家による入念な議論の結果、ソーシャル活動の一般的な指標として13という数字にたどりついた。そのため、13歳未満のお子様が使用しないように制限を設けている。これからも、どのようにOculusが使用されているのか、製品がどのように発展してくのかを観察し、その結果で製品ポリシーに関する決定していく予定だ」(同社)。
なお、任天堂が4月12日に発売した、手軽にVRを体験できる「Nintendo Labo VR Kit」は、眼科学・視覚研究の専門家の監修のもと、7歳以上であれば遊べるようにしている。頭にヘッドセットをかぶるOculusとは違い、デバイスを覗き込む形でゲームを遊び、何かあればすぐに目から離せるためだという。このように、デバイスによって対象年齢にも違いがあるため、欲しいVRデバイスがある方は、それぞれの対象年齢を確認してほしい。
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