グループワークで挑戦するEducator Challengeとは別に、もうひとつ用意された研修が、個人の実践を共有し合うLearning Marketplaceだ。ポスターセッションのように、それぞれの取り組みを各自のブースに展示し、教育者同士がカジュアルに交流する。当日は、民族衣装に身をまとう教育者がいたり、自国のお菓子を用意してブースを飾る教育者がいたりと、アットホームな雰囲気が作られた。
甲南高等学校・中学校の村上教諭は、数学が嫌いな生徒のために作成した自作教材を披露した。教材は、PowerPointのアニメーション機能を駆使して数学のコンセプトを理解できるイメージを作り、それを数学アプリ「GeoGebra」と組み合わせてSwayに埋め込んだもの。同教諭はそれらの自作教材を生徒たちがいつでもアクセスできるようにウェブサイトに公開。自宅でも学習しやすい環境を作ることで、数学の学習を習慣化するサイクルを作った。
つくば市立学園の森義務教育学校 山口教諭は、特別支援で実践した3つの取り組みを発表。学習障害やADHDの子どもを対象としたOneNoteやPowerPointなどのIT活用、コミュニケーションを練習するためのMinecraft: Education Editionの利用、自尊感情を高めるためのデジタルツールを活用した絵本づくりなどを披露した。作品づくりを通して、自分たちもできるという肯定感を育てていきたいと山口教諭は語った。
東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木教諭は、発達障害など学習に困難を抱える子どもに対するIT活用の実践を発表。具体的には、デジタル教科書やボーカロイドの利用、床に投影するインタラクティブプラットフォーム「WizeFloor」など、さまざまなテクノロジーを活用した学習を紹介した。
以上が、日本から参加した教育者らのブースだが、他の国の教育者たちはどのような内容を発表したのか。一部を紹介しよう。
Microsoft Education Exchangeの最終日に、日本から参加した教育者たちに話を聞くことができた。そもそも、このような教員研修を日本で受けることは皆無に等しく、それぞれの教員人生に大きなインパクトを与えたことは間違いない。日本の教育を変えなければと現場で奮闘する3名の教育者たちであるが、この研修では何が学びになったのだろうか。
甲南高等学校・中学校の村上教諭は「どの教師も当たり前のように英語を話し、テクノロジーも使っていて、他の国の教師たちがTwitterやFacebookでどんどん情報発信をする姿に驚いた。一対多の授業が多い日本の教育であるが、もっとコミュニケーションを重視した授業をしなければと思った」と率直な感想を語ってくれた。
つくば市立学園の森義務教育学校 山口教諭は「海外の教師たちがどのようなことを実践しているのかを知ることができて学びにつながった。自分のコミュニティにおさまらず、もっと外へ出ていく大切さを実感した」と述べた。また東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木教諭は、「日本はもっと当たり前の感覚でテクノロジーが使えないとダメだと思った。将来に向けて、新しく学ばなければならないことがたくさんあるのに、教育に入っていかないものが多すぎると感じた」と話した。
変化が起こりづらい教育現場を変えていくのは、どの国の教育者にとっても難しい課題だ。しかし、教育者自身がチェンジメーカーであり続ければ、その可能性は広がる。Microsoft Education Exchangeでは、そんな思いを新たにした教育者が多くいたに違いない。それぞれの国に戻っても、そのマインドを忘れることなく、教育をさらに前進させてほしい。
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