Luupは、電動キックボードのシェアリング事業の実現に向けて、静岡県浜松市・奈良県奈良市・三重県四日市市・東京都多摩市・埼玉県横瀬町の5市町との間で連携協定を締結すると発表した。4月18日には都内で説明会を実施。基本合意書への署名も行われた。今後、実証実験を行う計画だが、具体的な時期は未定。
電動キックボードは、自転車よりもさらに手軽な乗り物として、おもに海外で知名度を高めている。ペダルをこぐ必要がなく、所定の位置に足を乗せてアクセル操作するだけで、時速10数km/hでの移動が可能となる。
電動キックボードをシェアリングする事業についても、米国を中心に世界各国で広がりを見せている。Luupでは、これをいち早く日本で展開するため、2018年7月に創業。「LUUP」という名称で将来の提供を目指し、2019年3月22日には、シェアリングエコノミー協会と渋谷区観光協会とが締結した連携協定にも参画している。
4月18日の説明会では、浜松市の鈴木康友市長、四日市市の森智広市長、横瀬町の富田能成町長ら5町村の関係者が列席する中、Luup代表取締役社長である岡井大輝氏が協定締結の狙いと事業目標を説明した。
日本は現在、少子化、高齢化で苦しむ中、一方で海外からの観光インバウンド客は激増している。当然、公共交通機関やタクシーなど、移動手段に求められる機能や質も変わってきているのが実情だ。象徴的な例としては、人気観光地においてタクシーの稼働数を増やしたくても、オフシーズンを考慮するとそれ以上運転手を雇用できないなどのケースがある。
また、人口減少は、人と人をマッチングさせるサービスにおいても障害になってくる。岡井氏はかつて、認知症などを抱えた要介護者と、子育てなどの都合で長時間勤務できない介護士のマッチングサービスを企図したが、結果として失敗した。サービスの需要は底堅かったのだが、例えば介護士が「3時間だけ働きたい」となった時、電車移動するほどの時間はとれないし、かといって自転車では、訪問可能な要介護者の数が限定されすぎてしまい、マッチング困難だったという。
こういった課題は、手軽な手段で移動範囲を拡張できることによって、解決できる可能性が高まる。LUUPのような「マイクロモビリティ」が果たす役割は大きいと岡井氏は語る。
ただ、電動キックボードを日本の公道で走行させようという場合、道路交通法の制限を受ける。現行の法区分では、電動キックボードは「原動機付き自転車」に分類され、灯火類や方向指示器の整備が義務づけられている。よって、運転免許なく、誰もが気軽に運転することはできない。
海外では、最高速度、歩道走行の可否、免許、ヘルメットの有無などを制度面で規定し、実際にシェアリング事業も行われている。岡井氏はまず国内で実証実験を行い、LUUPの正式提供を目指していくという。
市町側の関係者も、連携協定に対する期待を語った。浜松市の鈴木康友市長は、同市が国内でも屈指の面積を誇る自治体であることに触れ、家からバス停までの移動、観光地の周遊など、さまざまなアイデアを示した。また、同じく協定を結んだ他の市町とも協力し、電動キックボードのシェアリングという、新しい分野の開拓にチャレンジしていきたいと述べた。
説明会終了後には、電動キックボードの室内試走会が実施された。用意されたモデルは、海外ですでに流通しており、実際のシェアリングサービスで使用されるものに近似しているという。スペック上の最高速度は時速19.5km。約2時間でフル充電状態となり、およそ3~4時間、走行できる。
報道関係者の間からは総じて「簡単に乗れる」「思ったよりスピードが出る」などの声が飛び交っていた。筆者も実際に乗ったが、バランス感が悪いのか、アクセル操作がおぼつかなかったせいか、やや怖い印象を受けた。
Luupでは、法律の遵守はもちろん、安全性についても特段の配慮を行うとしており、そのためにも実証実験が重要だとしている。
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