「広告がある限り、動機が一致することは決してないだろう」。Berners-Lee氏は、そう指摘する。それは、2つの「主」に仕えなければならないウェブサイトやアプリによく見られる現象だ。2つの主とは、サイトやアプリのユーザーと、それらに資金を提供する広告主のことである。ユーザーにとってプライバシーは望ましいものだが、広告主にとってプライバシーはターゲット広告を困難にするものだ。
また、広告主導型のサイトは不道徳な行為を招くこともあるという。その格好の例を紹介すると、マケドニアの若者たちは、インターネット上の偽ニュースの投稿と一緒に表示されるGoogleの広告から収入を得ていた。彼らに動機を与えたのは、それらの投稿内容が真実かどうかということではなく、何人がそのサイトをクリックするかということだった。「広告収入に関して言えば、『Hillaryは実はTrumpに勝ってほしいと思っていた』というのが最高の見出しだった」(Berners-Lee氏)
FacebookとGoogleはコメントの依頼にすぐには応じなかった。
Solidが基盤となる世界では、例えばユーザーは、自分の健康情報やフィットネス情報を自分で選んで医師と共有することができる。医師は医師で検査結果を選んでユーザーと共有することが可能だ。あくまでもデータの所有者が主導権を握る。
今後、ユーザーのSolid PODデータを活用するアプリが登場するだろう(おそらく、ユーザーが許可を与えて、アプリが提供するサービスの利用料金を支払う形になる)。Berners-Lee氏は、多くのユーザーのSolid PODが連携するアプリを思い描いている。
「これらすべてのスペースが手に入り、世界のあらゆるものを世界のあらゆる人と共有できるほどアクセス制御が整えば、連携的なアプリを開発できるようになる」(同氏)
現状からその状態まで到達するのは、容易ではないだろう。人々が許可を取り消したら、アプリはうまく動作しなくなるかもしれない。ある人がパーティーの写真を友人と共有するものの、その友人がそれらの写真を別の出席者に転送することはできない、ということもあるかもしれない。さまざまなファイルや種々のカテゴリのデータについて、許可設定の更新を求める要請が次から次へと届く世界を想像してみてほしい。
だが、Berners-Lee氏にとって、それは取り組む価値のある難題だ。Cambridge Analyticaが政治分析のために何百万人ものユーザーのデータを収集しようと試みる、あるいは、Googleが一般向け「Google+」の終了を決定したために、自分がこれまでに公開してきたことが帳消しになる、といった事態はなくさなければならない。
「Solidプロジェクトの狙いは、ウェブの仕組みを根底から覆すことにある」(Berners-Lee氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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