インドネシアの大学で「ロボットプログラミング講習」--日本の“ロボット教育”第一人者が講師に

 海外産業人材育成協会(AOTS)は3月、インドネシア東ジャカルタ区のダルマプルサダ大学で、学生を対象にした特別セミナー「ロボットプログラミング演習」を実施した。基礎的なプログラミング言語を扱うことができる学生の育成を狙いとしたものだ。

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 同大学はジャカルタ市内の東側のブカシ市ほど近くに位置している。日本の商社が開発した一大工業団地が連なる場所でもあるため、日系企業との造形も深いエリアだ。日系法人が会員となった現地の商工会「ジャカルタジャパンクラブ(JIC)」が存在するが、その会員であるインドネシア・トヨタ社(PT Toyota Motor Manifucturing Indonesia)の治具・金型製造部門のロザック部長も主任講師としてこのプロジェクトに協力している。

 2018年12月に開かれた本講座は、ATOSの3年プロジェクトとして開催する寄付講座で、プロジェクト終了後も大学が独自で継続・改善できるように、大学講師にもプロジェクトに参画してもらっている。

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 AOTSの寄付講座として開かれたこの特別セミナーの第1回目の講座は「自動化概論」と題し、大同大学名誉教授の西堀健司先生に、自動化の考え方やトヨタの生産方式を中心とした日本の管理手法について講義が行われた。

 そして第2回目を数える今回の講義の講師は、日本でETロボコン(組込システム技術を競うロボコン)の運営や審査、企業での教育を行っているチェンジビジョンの久保秋真氏と渡辺登氏。「ロボットプログラミング演習」と題して、日本の組み込みシステム技術協議会(JASA)の協力のもと、ETロボコンで審査委員会を務める久保秋氏が講義をした。

 久保秋氏は、組込みソフトウェア分野におけるオブジェクト指向技術、モデル駆動開発に興味を持ち、オブジェクト指向開発、組込みソフトウェア開発、アジャイル開発、モデル駆動開発のプロジェクト、コンサルティング、トレーニングなどに従事。その後はソフトウェア開発技術者の教育教材の開発、研修講師などを中心に活動する。ETロボコン、MDDロボットチャレンジでは、イベントの運営やソフトウェアモデルの審査員を務めるなど、ロボット教育の第一人者である。

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 講義では実際に学生がロボットを使い、自ら作成したプログラムでロボットを動かしながら、実践的なプログラミングを体感した。この講座に参加している学生は産業工学科の1年生と2年生を合わせて、計60名。2018年の2倍以上の応募があった中から選ばれた選抜メンバーだ。

 学生が実際にプログラミングし、レゴブロックを組み立てた走行体(簡易ロボット)を動かす演習を実施し、3名ずつのチーム戦で、無事走行体が走り始めると学生たちから歓声が上がった。

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 久保秋氏は「インドネシアはイスラーム文化圏のため、教える学ぶという関係性においても、封建的な文化が今だ色濃く残っている。学生たちがこの講座を通じて、ただ教授から教わることを熱心に聞いて、暗記するだけではなく、自分で組み立てて作る喜びを少しでも感じてもらうことができたら」と話す。また、教授へのコーチングの場としても、この寄付講座が役割の一端を担っており、授業中は熱心にメモを取る姿も見られたという。

 やりたいことをプログラムに直し、繰り返しや条件分岐の使いどころを理解したり、実際の動作(センサー・モーター)を知り、体験することを目的とする同講座を体験した学生たちは、普段の授業との違いに戸惑いながらも、熱心に話に耳を傾け、実際に手を動かして楽しみながら学んでいたという。

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 インドネシア国内では人件費の高騰や競争力強化のため、生産現場での自動化の必要性が指摘されている。中小企業などでは自動化に必要なシステム構築のための知識を持った人材の獲得が困難な状況が続いている。

 セミナーは、AOTSの東南アジア諸国連合(ASEAN)経済産業協力委員会(AMEICC)事務局としての活動で、同様の事業運営をASEAN各国で行っている。事業を通じて、ASEANに進出している日系企業の競争力向上を目指している。

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 なお、今回の講師を務めた、久保秋氏は著書も多数出している。ベストセラー「『作って身につくC言語入門』-ゲームを作りながらプログラミングのキホンをマスターするための基本をマスターする。-」の著者でもある。業界で実際に活躍しているプロのエンジニアに親しまれているのはもとより、子どものプログラマーの中にも、愛読書としている子もいるのだという。

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