建設現場で使われている施工管理ツール「&ANDPAD」を展開するオクトが、総額約20億円の資金調達を実施する。&ANDPADのプロダクト開発とカスタマーサクセスの体制を強化し、顧客体験の向上を目指す。
今回の資金調達は、グロービス・キャピタル・パートナーズ、DNX Venturesをはじめとする既存投資家を引受先とし、3月25日契約完了時点で約14億円の第三者割当増資を実施。クローズ予定調達金額は約20億円になる。あわせて、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー、最高執行責任者の今野穣氏が、オクトの社外取締役に就任する。
&ANDPADは、2016年3月にサービスを開始したクラウド型建設プロジェクト管理ツール。スマートフォンアプリを中心に利用され、シェアNo.1の施工管理アプリになっているという。バラバラに管理されていた写真や資料をクラウドに一元管理したり、電話やFAXだったやりとりをチャットに変更したりすることで、煩雑でアナログだった建設現場の作業を効率化する。
現場で働く人から「スマートフォンで現場管理できるようなツールを作ってほしい」と言われたのが&ANDPAD開発のきっかけ。この開発の流れは現在も変わらず「現場にいるお客様の声を集めて使いにくくないものを作る」ことを重視していると、代表取締役社長の稲田武夫氏は話す。
「建設現場では、電話やFAX、紙資料といったアナログのツールが使われているケースも多い。しかしこの状態では情報共有が行き届かず、ミスが起こることもある。ミスが起こると工期が伸び、現場で働く職人の方への支払いも増える。これにより原価が増え、仕事の粗利が減ってしまう」と稲田氏は説明する。
こうしたミスをなくし、粗利の改善、生産性の向上に結びつけるのが&ANDPADの役割だ。現在1600社を超える企業に導入されており、同日には、サービス開始3周年を機に、インフォグラフィックを公開した。導入企業からは「工期遅れがほとんど無くなった」「コミュニケーションが容易になったことで、施工品質を維持し、施主の方とのトラブルも減っている」などの声が相次ぐ。「デジタルでやりとりすることで、労働時間を減らせ、働き方改革にもつながる。FAXがなくなるだけでも影響は大きい」(稲田氏)と労働時間の短縮が、人手不足の解消にもつながっているという。
「私自身、建設現場で働いた経験はないが、その分現場の声を聞き、その声を集約してプロダクトを作った。建設現場は特殊性が強く、現場や作業内容によってプロセスや考え方が違う。それぞれの作業を担う人の声を聞き取ることで、全体にはまるようにしている」(稲田氏)と、&ANDPADは、現場の中に入るのではなく、現場の声を聞くことで生み出されたツールだ。
その分開発には時間をかけ、テストにも時間を割く。「スクラム開発で作るので、現場の方に直接触ってもらって、エンジニアと直に話してもらうこともある」(稲田氏)と話す通り、現場に近い開発環境を用意しているという。
開発環境を強化するとともに、より力を入れていくのが顧客体験の向上だ。「現在でもひと月50回以上の説明会を全国で実施していて、この取り組みは今後も続けたい」と稲田氏は話す。しかもこの説明会は新規顧客向けではなく、導入済み企業向け。徹底的なサポートをすることで、&ANDPADの強固な基盤構築を目指す。
カスタマーサクセスの体制強化の一環として、営業拠点も全国に広げる計画だ。「各地域のお客様に対して近くで関係を築いていきたい」と稲田氏は言う。
今後は「&ANDPADには建設現場の画像が1日あたり6万枚アップロードされており、合計1250万枚もの画像が集められている。このほか、現場で必要になる費用の流れなども蓄積されており、これらの情報を利活用していきたい」と蓄積されたデータの活用も視野に入れる。
稲田氏は「今回の資金調達では、カスタマーサクセスの体制強化とプロダクト開発体制の増強に注力する。特にエンジニアは積極的に採用していきたい。&ANDPADは、建設現場の方に日々使ってもらうことがすべて。いいものを作り続け、データ利活用につなげ、建設現場に貢献していきたい」とした。
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