マネーフォワードは3月6日、同社内に研究機関として「Money Forward Lab」を設立したと発表した。
Money Forward Labは、法人向け、個人向け、金融機関向け、決済・レンディング領域を手がける同社において、各事業のベースとなる研究を手がける。マネーフォーワードが持つ約750万ユーザーの家計簿データを使い、機械学習・深層学習、自然言語処理、UI/UXなど金融サービスにおけるインタラクションの研究を通じ、ユーザーが持つ漠然とした不安や課題の解決を目指す。
所長には、日本電信電話(NTT)での研究開発実績があり、Yahoo! JAPAN研究所の立ち上げをリードした北岸郁雄氏、同ラボの技術顧問には、国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター言語情報アクセス技術チームにてチームリーダーを務め、ニューヨーク大学研究准教授でもある関根聡博士が就任する。
まずはマネーフォワードが持つデータの優位性を生かした優先領域を重視しつつ、事業領域に還元。ただし、必要な領域であれば新規分野でもチャレンジする。また、技術領域については、深層学習と自然言語処理が“ど真ん中”になるという。理由として北岸氏は、「機械学習、深層学習の精度を出すには自然言語処理が不可欠。言語データなので、きちっと解析処理しないと機械学習にも深層学習にも寄与できない」とし、研究が進んでいる分野ではありながら、研究所の領域としてスタート時点から取り組むことになる。
家計簿データは、銀行のデータとアグリゲーションできていれば、収入と支出の総額が把握できるほか、キャッシュレス化で購買やECのデータなど、より細かいデータが把握できるようになるという。なお、データ活用については、マネーフォワードがデータ分析、サービス改良のために活用することについて、事前に同意を得ているという。また、第三者と協力して解析するといったケースでは、ユーザーに明示的に同意を得てからとしている。
同社取締役執行役員CTOの中出匠哉氏は、「マネーフォワードにジョインしたのは、もともと家計簿サービスのユーザーであり、そこに集まるデータに可能性を感じたから」とし、「少し先の未来が見通せないのが家計簿サービスの現状。データを活用することで次のアクションを明確にしたい」とし、食費を少し抑えるべきとアラートを出す際に、どう抑えたら良いか、浮いたお金はどう資産形成に移せば良いかと言った提案を実現したいという。ただし、押しつけではなく、あくまでも可能性を見せることで未来に対して前向きになれる支援ができればとする。
一方で、「ユーザーから預かったデータから新しい価値を生み出すことができていなかった。大学とも共同研究してきたが、家計データはセンシティブであり、研究室にデータをそのまま渡すことができず、弊社まで来てもらって特別な環境下で見てもらうなど、すごく不便な形で利活用をお願いしていた。データを生かせていないフラストレーションがあった」という。そこから、研究所の構想が生まれたという。
また、人材については、元ヤフーCMO(Chief Mobile Officer)で現LinkedIn日本代表の村上臣氏に、研究所の立ち上げを相談した際に紹介されたのが北岸氏だったという。まだ技術蓄積の体制がしっかりと整っていなかったヤフーで研究所を立ち上げるなど、研究組織を立ち上げる際にコアになる人物に感じたとする。
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