グローバルでの成功を目指すスタートアップたちが、ボクシングのようにリングの中で1対1のピッチバトルを繰り広げる「GET IN THE RING (GITR)」の日本大会「GET IN THE RING OSAKA 2019」が大阪のナレッジシアターで開催され、6月にベルリンで開催される本選の挑戦権獲得を目指した熱い闘いが繰り広げられた。
GITRは、2012年にオランダで始まったピッチバトルで、グローバル市場での成功を目指す起業8年以内のスタートアップを対象に、資金調達と支援の機会を与える国際プログラムとして運営されている。世界100都市で開催される予選を勝ち抜くと、年に1度の決勝大会に無料で招待され、最高100万ユーロ(約1億2700万円)の資金援助の権利をかけたコンテストに参加できる。他にも、世界から招待された350人の投資家や支援者らとの面談や指導をはじめ、様々な支援プログラムを通じてビジネスパートナーやネットワークを獲得するチャンスが得られる。
ピッチコンテストは独特のルールで、挑戦者は事業内容に関係なく、自社評価金額とGITR本部の判定によってライト級とミドル級にクラス分けされ、1対1で交互にピッチをする。1分間の自己紹介のあと、チーム、実績、ビジネスモデルとマーケット、資金と事業計画、フリースタイルの5ラウンド(テーマ)を各30秒ずつピッチしていく。最後に審査員から8分間の質問タイムがあり、その場のジャッジで勝敗が決まる。観戦者による判定タイムもあるなどライブ感あふれる運営で、参加者が一緒にイベントを盛り上げる。
日本大会は最初に福岡で開かれ、2017年からは大阪イノベーションハブが運営している。拠点や国籍に関係なく参加できることもあって、3回目となる今回は台湾やシンガポールなどからも応募があった。ライト級12社、ミドル級6社で予選が行われ、勝ち抜いたライト級4社、ミドル級2社による決勝が公開形式で実施された。
事業内容はタブレット向けのプログラミング教材やパーソナルロボット開発、ビーコンを利用した屋内位置情報調査する会社など幅広く、すでに海外でビジネスを展開している会社もあった。GPUベースのマシンラーニングクラウドサービスを開発するPegaraは米国で起業しているが、同社CEOの市原俊亮氏は「ピッチイベントは他にもあるが、今後の展開で自分たちの事業をどうアピールするかを考える機会にもなると思い参加を決めた」と言う。
進行はすべて英語で、リングマスターがテンポよくスピーディーに全体の運営を盛り上げる。試合は事業内容が異なるためディベートのような直接バトルにはならず、いかに短時間で事業をアピールできるかがポイントとなる。世界のビジネスで成功するには事業がいかに魅力的かを伝えるのも重要で、4人の審査員は「ビジネスにかける思いや情熱を評価したい」と、挑戦者たちに厳しい質問を次々に投げかけていた。
結果はライト級が農業管理アプリを開発するSagri、ミドル級がAI搭載のアドフラウド対策サービスを展開するPhybbitが勝利し、決勝大会への挑戦権を獲得した。最年少の参加者でライト級を勝ち抜いたSagriのCEOである坪井俊輔氏は、「インドで事業を始めたところだが、次のグローバル展開を模索していたときにGITRの出場を勧められた。英語力に自信がないので、事業を1人でも多くの人に知ってもらうだけでもいいと思っていたが、優勝して本当に嬉しい。他の参加者や審査員と交流できたのもいい機会になった」とコメントした。
GITRは世界でも徐々に注目を集めており、参加者の増加だけでなく、決勝大会の出場者が巨額の投資を受けたり、アリババに企業買収されたりするケースも出ている。2019年は150社が決勝大会に参加する予定だが、日本大会を勝ち抜いた2社がベルリンの決勝大会でどのような成果を上げるのかが楽しみだ。
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