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大阪ガス、飲食業の課題解決へ--「食の産業」の未来を一緒に考えるパートナー募集へ

加納恵 (編集部)2019年03月04日 17時53分
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 大阪ガスが、飲食業における課題解決に取り組んでいる。大手企業からベンチャー企業まで幅広いパートナーシップを築くため「FOOD INDUSTRY SUPPORTERS」(FIS)を開始。3月1日、「食の産業」の未来を考えるとともに課題を解決する方策を考える「Food Industry Supporters forum in TOKYO」を開催した。

大阪ガスが「FOOD INDUSTRY SUPPORTERS」(FIS)を開催する
大阪ガスが「FOOD INDUSTRY SUPPORTERS」(FIS)を開催する

 大阪ガスは、大阪市に本拠地を構えるガス会社。ガスのほか、最近では電気の販売も手がけるほか、不動産の開発や賃貸、情報処理サービスなど、ライフ&ビジネス ソリューション事業も担う。飲食店は大阪ガスにとって大切な顧客。「飲食店に対して、ガスや電気の供給だけではなく、いろんなことをやっていけたら」(大阪ガスエネルギー事業部ビジネス開発部デジタルビジネスチームマネージャーの木村浩康氏)との思いから、関西の飲食店などを紹介する雑誌「あまから手帖」を発行したり、レシピサイトを運営したりといった事業も展開している。

 FISは、こうした飲食店をサポートする事業の一環として実施しているもの。「フードロスや消費税引き上げによる軽減税率、キャッシュレス化対応など、飲食店を取り巻く環境の変化とともに問題も出てきている。この課題解決をサポートしていきたいが、大阪ガス1社ではできることに限りがある。FISを通じて、多くの方から課題解決のアイデアやご意見をいただき、一緒に飲食業を盛り上げていきたい」(木村氏)とFIS開催の背景を話した。

 2月に大阪で同様のイベントを開催しており、今回が2度目。食の産業をともに盛り上げていきたい人、サービスを提供したい人を参加資格に据え、イベントを通じて、広くパートナーを募る考えだ。

世界各国でフードテックが加速

 基調講演には、「テクノロジー×食」をテーマにしたイベント「Smart Kitchen Summit Japan」を企画する、シグマクシス ディレクターの田中宏隆氏が登場。「世界で過熱する食と料理のイノベーション」をテーマに、食のカンファレンスが世界的に増えている現状や、なぜ、注目を集めているかなどについて話した。

 田中氏によると、フードテックのイベントは2015年頃に欧米でスタート。調理家電のIoT化が1つのきっかけになっており、初年度200人程度だった参加者は、現在1000人を超える規模にまで拡大しているという。参加者は家電メーカーや食品関連メーカー、食関連ベンチャーなどのほか、住宅、インフラ、官公庁、学校など多岐に渡っており、業界を越えた多様な参加者がいることが特徴だ。

2015年以降世界中で食×テクノロジーのカンファレンスやコミュニティが成長
2015年以降世界中で食×テクノロジーのカンファレンスやコミュニティが成長

 投資領域としても注目されており、「フードテック領域への投資額は5年前から増え続けている。多くの人が食を盛り上げるだけではなく、次の投資領域と見ている」(田中氏)と分析する。

 田中氏は今、起きている食のイノベーションとして、企業や組織の枠を越え、新規事業の創出を目的としたパナソニックの「Game Changer Catapult」(ゲームチェンジャーカタパルト)による取り組み、スマートみそ作りキットサービス(マルコメと協力)や料理キット宅配サービスを手がけるシャープの「ヘルシオデリ」などを紹介。さらに、フードロス削減を目指したフードシェアリングサービス「TABETE」、冷凍食品会社ニチレイによる、香りや好みから現在の心理状態に合わせたレシピを提案するサービス「Conomeal」など新たな動きも示した。

 フードテックが注目を集める現状について田中氏は「食事は世界中の人が必ずする行為。毎日することだからこそ、需要があり、市場を作れる可能性がある。食に対して人は料理をしたいとか、身体にいいものを摂りたいとか、いろいろな欲求を持っている」と説明した。

飲食店では1年間に28%の人が辞めるという事実

 イベントではパネルディスカッションも開催した。パネリストには田中氏のほか、飲食店とそこで働く人材のミスマッチをなくすため採用活動・転職活動を支援する人材サービスを手がける、クックビズ 代表取締役社長CEOの藪ノ賢次氏、店内の混雑状況を検索できる空席情報検索プラットフォーム「VACAN」(バカン)を提供するバカン 代表取締役の河野剛進氏、農業分野のブランディングのほか、農産物の販路開拓と、自社での農産物流通を担う、コンセプト・ヴィレッジ 代表取締役の馬場大治氏が登壇。モデレーターは、企業における新規事業創出プログラムのサポートなどを請け負う、Filament 代表取締役CEOの角勝氏が務めた。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

 角氏が「日本の食産業のいいところと悪いところは」と尋ねると、馬場氏は「どこに言ってもおいしいものを食べられるのがいいところ。一方、作り手側になると、食材をどこに注文していいのかわからないなどの課題がある。飲食店によっては、いい食材を探したい、けれどそのルートがわからないということも多いのではないかと思う」と、食材発注に対する、現状について課題点をあげた。

 河野氏は「観光地では特定の人気スポットに行列ができて、それ以外の場所では店舗が廃れてしまったり、収入が得られなかったりしている。また行列待ちの無駄な時間が多いと聞く。そうした一極集中による混雑を解決したい」とした。

 一方、藪ノ氏は「飲食店では、1年間に28%の人が辞めるという結果が出ており、3年で従業員が一回転する店舗も。これには、店舗を移り変わることで多くのレシピを学びシェフとしての腕を極めるというポジティブな面もあるが、短絡的にやめてしまう人もいて、かなりの人手不足になっている」と飲食店の雇用状況を説明。それに対し田中氏は「米国ではロボットを導入する店舗も出てきた。しかし今度は労働者から職を奪うなという運動が起こっているケースもある」とアメリカの事例を話した。

 さらに藪ノ氏は「飲食店の業態はとても多様だが、飲食業界の人員はあまり多様性がない。オーナーシェフ、店長、スーパーバイザーなどがほとんどで、経営を考えた時に財務やマーケティング、テクノロジがわかる人が足りないように感じる。もっと多様な人材を飲食業界に巻き込む必要がある」と課題を提示。田中氏はシンガポールにあるクッキングスクールを例に挙げ、「日本での料理学校は学校を卒業した若い人たちが料理人になるために通うことが一般的だが、シンガポールのその学校では、24~25歳の社会人経験者がキャリアチェンジなどを目的に入学する。そこで飲食ビジネスを学び、業界に入っていく。料理学校というよりは料理ビジネススクールで、人材の交流、融合を促すことによって飲食業界が元気になっている」とコメント。日本の飲食業界における人材難に対する、一つの答えを示した。

 角氏は「飲食業界における課題は、多様性がもたらされ、人材が確保されていく中で経営を充実したり、豊かなエコシステムが生まれることが課題解決の道筋になる」と締めくくった。

 大阪ガスでは、FISの第1回締切を3月18日に設定。応募対象者は法人に限定しており、組織形態、規模は問わない。応募者にはFIS事務局から個別に連絡するとしている。

大阪ガスエネルギー事業部ビジネス開発部デジタルビジネスチームマネージャーの木村浩康氏(右)、大阪ガスエネルギー事業部ビジネス開発部デジタルビジネスリーダーの目堅智久氏(左)
大阪ガスエネルギー事業部ビジネス開発部デジタルビジネスチームマネージャーの木村浩康氏(右)、大阪ガスエネルギー事業部ビジネス開発部デジタルビジネスリーダーの目堅智久氏(左)

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