2020年に必修化される小学生のプログラミング教育に向けては、現場の対応が大きな課題になっている。小学生向けプログラミング教育に取り組むサイバーエージェントの子会社CA Tech Kidsは、奈良県帝塚山小学校と共同で、オンライン教材を使ってプログラミングの「反転授業」に取り組んでおり、その成果を発表する最終授業が記者向けに公開された。
反転授業とは、通常の授業内容を「自宅」で予習し、「教室」ではこれまで宿題とされてきた課題や演習などに対して、教員や生徒同士でコミュニケーションしながら取り組む授業形態のこと。
この反転授業で使われた、CA Tech Kidsが開発するオンラインプログラミング学習サービス「QUREO(キュレオ)」は、ブラウザからログインして使うイーラーニング教材で、プログラミング学習言語のScratchをベースに開発されている。入出力や条件分岐、並列処理などの知識に加え、ゲームを作ることを通じてプログラミングによって動かすことが学べる。
授業は78名いる4年生2クラスを対象に月1回のペースで約9カ月行われた。1クラス約40名と小学校では人数が多いことも、個人のペースで学習できる反転授業を取り入れた理由の1つだという。QUREOは進捗状況や習得度といった詳細なデータを可視化でき、どこでつまずいたかもひと目でわかる。生徒は、昼休みや自宅のPCなど、どこで学習するのも自由だ。
もともと個人や塾向けに開発されたものを授業用に改良しており、同社のスタッフが毎月授業に参加して得られたフィードバックも反映した。理解度をゴールド、シルバーでランク付けしたり、達成度に応じて紙シールを配ったり、授業全体の折り返しのタイミングで復習したりするなど、授業の方法もあわせて試行錯誤が重ねられた。
オンライン教材を取り入れたことで、教員も授業で最も大事な児童のサポートに集中でき、6割を超える児童が目標とする15ある学習項目をクリアし、さらにその先の項目まで自ら進めていった。ほとんどの児童がゲームをプレイできるレベルまで作り込むことができ、公開授業では児童がお互いのゲームをプレイしあったり、指名された児童が正面のスクリーンで作品のデモを見せながら、工夫した点やこれからプログラミングでしてみたいことを発表したりした。
帝塚山小学校では早くから全学年を対象に「情報科」の授業を取り入れており、専任教員も置いて1年生からプログラミング教育をしている。マウスやキーボード操作といったPCの基本的な使い方から始まり、4年生からScratchを使った授業をしているが、オンラインツールを教材にしたのは今回が初めて。「あらかじめ用意されたパーツの組み合わせでゲーム作るので、本来のプログラミング教育ではないと言われるかもしれないが、1から作るには時間が足りない。4年生ではプログラミングを動かすまでを体験させ、コードを書くのは翌年以降にする予定」と、情報科教員の佐藤葉子氏は説明する。
動かすことを目標にしたことで、授業の集中力は想像以上に高められたという。「反転授業なので進捗度に差が出てもそれぞれに達成感があり、やる気がある児童はどんどん先に進められるし、他の授業では付いていけずに消極的な児童も楽しく学んでいた」と、もう1人の情報科教員である津田文子氏は話す。教材はゲーム開発のプロが制作に関わっていて、表示されるキャラクターのデザインレベルが高く、種類が多かったことも集中できる要因になっていたそうだ。
同校の池田節校長は「プログラミング教育で大事なのは先生が先回りして答えを教えず、なるべく自分で気づくようにすることだ」と言う。「情報教育は新しい何かを自分で作れることに気づいてもらうことが狙いであり、今後も外部の人たちと積極的に協力しながら子どもたちの学びを豊かにしたい」と今後の展望を語った。
CA Tech Kids代表取締役社長の上野朝大氏も、実際に授業で使うことでいろいろな課題が見え、さらに改良を重ねたいとしている。「かなり難しいと思うが、できれば先生の知識に関わらずプログラミング教育ができる機能を提供し、先生の負荷を最小限に抑えて授業に取り組めるようにしたい」(上野氏)。
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