HEROES PROJECTを通じて得た想定外の反響として、「ベテランの活躍」「自発的な共創」「若手の育成」の3つを掲げた。「参加者は挙手による希望で集まったが、意外にもベテラン社員が多かった。聞いてみると子育てで本社に異動できない方や、地元に愛着を持っている方が多い。熱量も高いため、アイデアが何度ボツになっても諦めずに新しいアイデアがどんどん生み出される。指名制ではこうはいかなかっただろう」(尾﨑氏)と振り返る。
自発的共創については、「本プロジェクトの噂を聞きつけた現場営業担当者が、自分の顧客企業と共に取り組んでみたいと参加してきた。本プロジェクトの目的(であるビジネス共創)と合致する」(尾﨑氏)と説明。そして若手の育成は、「これまではアイデア出しまでの研修という位置付けであったが、私たちが支援しながら良いアイデアについては事業化までできる仕組みに変更すると本気で取り組みだし、とあるエリアで選考に漏れたチームは本気で悔しがっていた」(尾﨑氏)とビジネスに向き合う姿勢を生み出せた一例を披露した。
メンバーは本業を持ちながら本プロジェクトに参加しているわけだが、「『課題設定力が向上した』『経営的観点が醸成された』『資料の質が上がった』など、本業でも良い効果が出ているとの声が上がっている」(尾﨑氏)。
本業を持ちながら地域で新たなビジネスを立ち上げる。「これを進める上で重要なポイントが2つある」(尾﨑氏)と説明する。1つは"エリア長を巻き込む"こと。「有志の活動は業務時間外で旅費も出ない。直属上長のプロジェクトに対する理解が必要だが、役員クラスであるエリア長の承認があれば協力も得やすい。特に役職も高くない私たち2人でエリア長へ取り組みの説明に赴いたが、『会社を変えよう』とする思いは案外伝わる」(尾﨑氏)と社内の根回しも重要であると語った。
もう1つのポイントが"現場社員に最後までやってもらう"。本社で引き取ると単なるアイデアコンテストになってしまう。前述したように20ほどのアイデアは事業化検討段階に進むことから、「最後まで取り組んでもらうことは、会社の収益や地元への貢献に真摯に向き合うことになるし、人材育成や会社の風土改革にもつながる。私たちはそれを全力でサポートする」(尾﨑氏)と本プロジェクトの趣旨の1つである会社改革に一定の成果が見られることを強調した。
他方で「アイデアがまとまらない」「情報収集不足」「チーム編成のあり方」「ビジョンがあとづけ」といった新たな課題が明確になったが、地方の課題や実現したいビジョン、共創したい地元企業・自治体を中核にしてチーム編成を行う方法や、著名人の講演やサポートプログラムの整備などで改善すると説明する。
筆者が興味深かったのは「Facebookに非公開グループを作成し、市場動向などを投稿しているが、参加者が一部に限られてしまう。若手社員はFacebookをあまりやっておらず、仮にアカウントを持っていても学生時代の投稿を知られることに抵抗感があるみたいだ。他の情報共有方法を考えなければならない」(尾﨑氏)という話だ。
若者の"Facebook離れ"が顕著であることは筆者も聞き及んでいるが、幅広い年齢層が参画するプロジェクトだけに、世代格差の溝を今後どのように埋めていくのか関心を持った。
最後に、「現場の社員と地元企業や自治体が共創して新たな価値を生み出し、地域や社会などのさまざまな課題を解決することをめざし、これからも私たちは進んでいく」(尾﨑氏)と、HEROES PROJECTを活用した地元企業や自治体とのビジネス共創に注力する決意を改めて表明し、一緒に取り組める企業や自治体の参加を呼びかけた。
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