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人手不足に待ったなし--カシワバラが総額50億円を投じる建設×スタートアップによる課題解決

加納恵 (編集部)2019年03月05日 08時30分
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 建設業界における人手不足が待ったなしの状況だ。技能職の約3分の1が55歳以上と言われる年齢構成と新規雇用の落ち込みなどから、2025年には労働力人口が約11万人不足するとも言われている。2020年以降も大型ビルやタワーマンションなどの修繕も増えていくと見られ、労働力不足は目の前に迫る深刻な問題だ。

 カシワバラコーポレーションでは、人材不足が叫ばれる建設業界におけるITの活用に注力。2018年秋には事業開発プロジェクト室に、Construction(建設)とTechnology(技術)をかけ合わせ、建設業界におけるITの活用を意味する「Con-tech」を担う、「CON-TECHプロジェクト」をいち早く立ち上げた。

 2月21日には、建設系ITスタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」を発表。総額50億円を投じる計画だ。CON-TECHプロジェクトとして、建設業×ITを推進するカシワバラコーポレーション 事業開発プロジェクト室 CON-TECHプロジェクト プロジェクトマネージャーの山田浩司氏と、経営企画室の妹尾優子氏に、建設業界が抱える課題とIT化によってどんなメリットを期待するかについて聞いた。

カシワバラコーポレーション 事業開発プロジェクト室 CON-TECHプロジェクト プロジェクトマネージャーの山田浩司氏(右)と、経営企画室の妹尾優子氏(左)
カシワバラコーポレーション 事業開発プロジェクト室 CON-TECHプロジェクト プロジェクトマネージャーの山田浩司氏(右)と、経営企画室の妹尾優子氏(左)

 カシワバラコーポレーションは1949年に創業。プラント塗装メンテナンスや、マンションの大規模修繕などでも知られる建設業の老舗だ。2019年で70周年を迎え、日本の建設業のキープレーヤーとして数々の現場を担ってきた。

 「建設業は、人手を投入することで、納期の遅れや急な工事対応などのトラブルを解決してきた業界。しかし、ここ数年現場はつねに人手不足の状態。人手さえそろえばという旧来の感覚は通用しなくなりつつある。就労人口が減っている以上やり方を変えないといけない。その方法の一つがIT化」(山田氏)と話す。

 ただし、長きに渡り、人手で労働力を確保し、人づてで仕事を選び、電話やファクスで受発注をしてきた建設業界は、IT化とはほど遠い業種の1つ。「いわゆるIT系の仕事をしている人にしてみたら無駄と思われる作業が山ほどある。この中で納得して仕事をしてもらうのは難しいはず」(山田氏)と、業界のIT化を阻む要因を挙げる。

 加えて、建設現場における技能者の役割も複雑だ。「現場には、複数の仕事を1人でこなす多能工と呼ばれる人と、1つの仕事を請け負う単能工の方が混在して仕事をしており、仕事を細分化しているケースも多い。そうした現場の状況を把握していなければ、作業の効率化や省力化を実践できるITツールは作れない」(山田氏)と話す。

 カシワバラでは、作業の効率化、省力化をITによって解決できるスキルを持ったスタートアップ企業とリアルな建設現場の課題を結びつけることを目的にJAPAN CON-TECH FUNDを開始。「建設業の実態は、実際にやっている人間でなければわからないことが多い独特の世界。業界のしきたりや旧来のやり方を古い、非効率だと切り捨てるだけでは、現場の納得は得られない。私たちがやりたいのは、今のやり方を破壊したいわけでも、否定したいわけでもなく、職人にしかできないことに集中できる環境を整えたいだけ。そうした環境づくりのため、非効率的な部分を改善し、IT化できる部分はそちらに肩代わりさせたい」(山田氏)と話す通り、CON-TECH FUNDを立ち上げる目的は明確だ。

建設系ITスタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」
建設系ITスタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」

 山田氏は「ITに強くアイデアを持つスタートアップの方と建設業に携わる人では、ものの考え方が違う。単純にマッチングさせてもスムーズな導入にはいたらないだろう。そこで、私たちカシワバラが間に入ることで、双方の橋渡し役を担いたい」と言う。

 「カシワバラの中で現場の作業軽減や効率化につながるツールも作れるが、それだと弊社の仕事に特化しすぎてしまって、横展開が難しくなる。あらゆる建設現場に対応できるシステムであれば、業界全体で業務を改善できるはず。JAPAN CON-TECH FUNDで支援するスタートアップには、業界全体で使えるようなITツールを開発してもらいたい。その部分の支援は惜しまず、ファーストクライアントになろうとも思っている」(山田氏)と目指すのは建設業界全体の業務改善だ。

 CON-TECHプロジェクトは、代表取締役の柏原伸介氏と同社財務部長、山田氏、妹尾氏の4名が在籍。「2018年の夏にプロジェクト化し、秋口には部署として新設。経営陣がコミットしているため、意思決定が早くスピード感をもって動いていける。今回の投資を含め、テクノロジーを活用し、建設業界に新しい風を吹かせたい」(妹尾氏)と、位置づけを話す。

 「人手を増やせばトラブルを解決できるという時代は終わった。建設現場をIT化して効率化するのは、早急に手を打たなければならない現実。慢性的な人手不足の現状でも、回るような現場に変えないといけない。現場にいる一人ひとりの仕事を軽減させつつ、きちんとした賃金を支払える環境を整えていきたい」と山田氏は今後の方向性を話す。

 JAPAN CON-TECH FUNDは、2月21日からスタートアップ企業を募集。山田氏は「建設業の現場のITを使って変えていけるアイデアを持つスタートアップは数多く存在すると思う。そうした課題改善にするようなアイデアと持つ会社と組みたい。そうした課題改善とともに、建設は危険と隣合わせの職業でもあるため、そうした安全性を追求したツールも欲している会社が多い。建設業界の課題解決をカシワバラとともに目指してほしい」と話した。

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