1月31日~2月2日にかけて、タイ・バンコクのSrinarinwirot大学キャンパス内で、タイの政府系組織である、Electronic Transactions Development Agency(以下ETDA)が主催するイベント「イーコマース イン・ザ・パーク」が開催された。
ETDAとは、2010年11月に設立されたタイ政府の機関のことで、2019年に設立8年目を数える、同国のデジタル経済社会省(MDES)傘下の機関である。主な取り組みは、民間企業の事業とのコラボレーションだ。世界各国の企業と覚書を交わし、タイ国内における電子取引の発展、利用の促進、全国民への平等なアクセスと信頼性の高い利用環境の構築、上記事案に関する情報収集や連携を積極的に行っている。
ETDAは、政府系機関たる組織力や経済力と、ベンチャー企業のようなフットワークの軽さを兼ね備えた機関といえる。「政府系組織」に対して日本人が持っている、“お堅いお役所仕事”のイメージとは一線を画している。もちろん、ETDAと提携をしている民間企業にとっても、タイ国の機関と事業を共にすることによる、社会的な貢献度、株価への好影響、事業自体の成長などへのインパクトは強い。
そんなETDAが3日間にわたり開催したのが、Eコマースの祭典であるイーコマース イン・ザ・パークだ。会場となったSrinakarinwirot大学の現役女子大生が実行委員を務めており、Eコマースのイベントとあって、会場内のいたるところでスマホ決済用のQRコードを見かけた。
また、ETDAが賞金を出す大学生のジングルコンテストも開催され、100万円を超える賞金を手にしたチームもいた。さらに、タイでEコマース事業を手がける企業のパネルディスカッションも開かれ、大学生や休日のラフな服装に身を包んだビジネスパーソンの姿が目立った。そのほか、室内での企業プレゼンテーションもほぼ満席になるなど、タイにおけるEコマースへの関心の高さをうかがわせた。
なお、2018年には、2つの日系企業がETDAと覚書を交わし業務提携している。タイ政府機関ETDAと仮想通貨「OmiseGO(オミセゴー/OMG)」は、2018年2月に両当事者が協力し合う旨の覚書に署名。オンライン決済ポータルとともに、デジタルID認証システムのサービスに係る共同開発をしている。
開発中のサービスは「eKYCポータル」。これが完成すると、電子顧客確認が可能になるという。Omiseのブロックチェーンの技術を使いID検証サービスプログラムを提供し、詐欺行為や情報悪用を防ぐことが狙いだ。過去の詐欺行為なども記録に残るように設計される予定で、名前や顔を変えてもこのシステムを通過できない、強固な仕掛けを構築中だという。
そして同年5月には、LINEがタイの情報モラル教育に関する覚書を締結している。タイ国内におけるインターネットの安全な利用に関する啓発活動の強化や促進のため、以前から情報交換をしていたETDAとLINE Thailandが、高評価を受けている日本の情報モラル教材に着目し、これをタイ文化を配慮しつつ翻訳に取り組むこととなった。タイ国内の小学校、中学校および高等学校などの児童・生徒、その他インターネットを利用するすべての世代を対象に、この教材が広く使われている。
LINEは、子どもだけでなく幅広い層を対象とした啓発活動、タイ国内の安全なインターネット利用におけるニーズをすくい上げるための調査・研究をも視野に入れ、両者で協議を進めていく予定だ。
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