今後の事業戦略ではまず、3年後にはコンシューマ事業の売上を2018年比で2倍に、法人事業の売上を3倍に引き上げるという。目標達成に向けた施策としては、コンシューマ事業ではブランドマーケティングの強化とともに、サブスクリプションビジネスの推進と、製品ラインアップの拡充を挙げた。
藤岡社長は、サブスクリプションビジネスの推進の狙いについて、まだカスペルスキーの製品に触れたことがない消費者に、気軽に使ってもらえる仕組みを提示していくと語る。そして、他社では年単位のサブスクリプションが一般的だが、1カ月や数カ月など短期間のサブスクリプションプランを用意する考えを明らかにした。
1回購入したら、最低1年間は使わなければならないと考えると、製品選びも慎重になるが、1カ月契約が可能ならば「試しに使ってみようか」と考えるユーザーも増えるだろう。藤岡社長は、短期間のサブスクリプションでカスペルスキーの製品をとにかく使ってもらった上で、その良さを理解してもらい、長期契約のサブスクリプションにつなげたいと語った。
製品ラインアップの拡充については、ネットワークセキュリティに対するリテラシーが高いユーザーに向けた製品を検討しているという。藤岡社長は、セキュリティ対策ソフトのユーザーの8割がインストールした後は放置したままで何も操作してしないと語った。もちろん、ユーザーに何も意識させることなく、安全を守り続けることは大切だ。
一方で、自身の端末に少しでも異変が起こったら何が起こったのかすべて把握して理解したいと求めるユーザーがいることも事実。このようなユーザーになるべく多くの情報を提供するソフトウェアが登場する可能性があるということだ。
法人事業の事業戦略については、宮橋氏が説明した。氏は、他社に比べた同社の優位点として、セキュリティ関連情報を収集、分析する体制と、そのデータ量を挙げた。4億人以上の個人ユーザー、27万社以上の法人ユーザーに加えて、99%以上のボットネットを捕捉するKaspersky Labのボットネット追跡システム、安全なURLやソフトウェアを記録したホワイトリストなど膨大な情報を収集し、Kaspersky Labの「HuMachine Intelligence」という仕組みで解析する。
HuMachine Intelligenceは、収集した情報を統計解析やホワイトリストデータベース、機械学習などを活用して可能な限り自動で分析する仕組みだ。Humachine Intelligenceが処理するデータは1日当たり36万件に達し、そのうち99%は自動処理で済んでいるという。残りの1%はKaspersky Labの熟練のアナリストが分析している。このようにデータを処理した結果として、Kaspersky Labは脅威情報を提供している。
同社の製品は、その脅威情報を活用しながら、エミュレーターによるヒューリスティック検知や機械学習モデルなどの技術も利用して、悪意のあるソフトウェアを検知する。その性能の高さは、第三者評価期間によるテストで実証済みだという。
第三者評価期間によるテストは数多く存在し、それぞれ評価の傾向が異なる。Kaspersky Labはその傾向の違いをあえて意識せず、数多くのテストに参加して、1位を受賞してきた。2017年は第三者評価期間のテストに86回参加し、72回で1位を受賞し、78回は3位以内に入賞している(3位入賞率91%)。
宮橋氏は、これだけの実績を挙げている技術を基にした製品を法人向けに拡販していくために、営業体制、技術支援体制、マーケティング体制を刷新し、中途採用などで増員したという。例えば、従来は大手企業もSMB(中小企業)も同じ部署が担当していたが、部署を分けて、大手企業向けに直接営業するハイタッチセールスを担当する部署などを新設した。
新体制では、金融機関やエネルギー企業などの重要インフラ事業者から、大手企業、自治体、中堅、中小企業、スタートアップまで対応していく。例えば、自社でSOC(Security Operation Center)を運営するような大企業には、SOC運営に向けた商品とサービス、工場を運営している企業には工場の産業制御システムに向けたセキュリティ対策製品など、企業、団体の規模や業種、個々の要望に合わせた商品やサービスを提供していくことで売上げを伸ばしていくと語った。
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