THE DIALでは、柔らかな照明で照らされた部屋くらいの大きさの立方体の内側で、1人のビューアー(ナビゲーターと呼ばれる)とそのほかの2人がiPhoneを手にテーブルの周りを歩く。iPhoneの画面ではARの登場人物が、プロジェクションマッピングで投影された家の周りを動く。ARとプロジェクションによって登場人物とこの舞台が映し出されるが、物語の場面は、ナビゲーターが移動する場所に応じて展開していく。
それは、スーパーで自動ドアの前に立つときの感覚に少し似ている。違うのは、店内へのドアが開く代わりに、新しい場面が展開することだ。
プレーヤーの動きは、この立方体の中で変化する照明の色とも同期する。ミニチュアの家の南に立つと、そこで展開する冬の夜のシーンに合わせて、照明が淡い青色に変わる。家の西側に立つと、秋の午後の雰囲気を醸し出すかのように、照明がオレンジ色に変わり、影が長くなる。
こうしたハイテクの連携は、プレーヤーが自分の思い通りに物語の筋道をたどる中で、自然に発生するように設計されている。プレーヤーは、この家の外の石壁に車で衝突してしまった女性を中心に展開する、インタラクティブな物語の謎を徐々に解き明かし、かつて裕福だった一家の裏の顔を暴いていく。
Flaherty氏は、最終的に、本物のストーリーラインがある魅力的な物語が完成することを望んだ。物語にとって重要な動きをすると、インタラクティブな手法は「姿を消し」始める、と同氏はいう。
Flaherty氏はこのプロジェクトの前提について、「技術を壊そうとしているわけでも、ボタンを押すことに注力しようとしているわけでもない」と語った。
一方、Painter氏は自身の作品Embodyであえて物語を伝えることを避けたいと考えた。Embodyは空想のヨガ瞑想のように感じられる体験だ(余談だが、ヨガが極めて苦手な筆者のような人間でも、もう一度やりたいと思ったほどだった)。同氏の狙いは、未来のストーリーテリングではなく、未来の成果のように感じられるものを作り出すことにあった。
Embodyを体験するユーザーは、ステレオカメラの前に置かれた圧力センサマットの上に立つ。カメラはユーザーのとった体勢の形を記録する。こうして記録されたデータは、ユーザーの周りに表示されるVR画像を同期させるのに利用される。ヘッドセットの中では、半透明のキャラクターが手本を実演することで、ユーザーにさまざまな体の動きをさせる。そのキャラクターの動きを真似すると、芽を出す木の枝のアニメーションが手を差し出して、ユーザーの動きに合わせるように一緒に踊ってくれる。
「この体験を導く道具として、人々の身体を使いたいと考えたが、その一方で可能な限り多くのテクノロジを身体から取り除きたいとも思った」(同氏)
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