学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校(N高)は2月4日、教員の働き方改革の一環として、インターネットを使った「リモートワーク制度」を導入することを発表した。4月から全教員の1割をリモートワークにする予定。
担任補助業務をリモートワーカーに任せることで、担任がより生徒に寄り添えるようにする一方で、出勤することが難しい人に新たな働き口を提供する狙い。当初は18歳以下の子どもを持つ、シングルマザーを優先的に採用するとしている。
文科省は1月25日に、「学校における働き方改革推進本部」を設置し、教員業務の役割分担や負荷軽減策の検討を進めている。そこで、N高のリモートワーク制度では、文科省が提示した教員の負荷軽減が可能な業務の中から、担任連絡補助や学習計画作成補助、学習システム設定・利用説明補助、そのほかの事務作業の補助などについて、出勤が困難な在宅勤務希望者に対して、2月4日から採用を開始する。
リモートワーカーに依頼するのは、必ずしも担任がする必要がなかったり、負荷を軽減したりできる業務だ。具体的には、学習システムの設定が分からないといった問い合わせの対応や、各種アンケート対応、学習進捗状況の確認と連絡、スクーリングの時間割作成や出欠確認、採点結果のシステム登録などだという。
角川ドワンゴ学園・理事であるカドカワ代表取締役社長の川上量生氏は、N高の立ち上げ時に、(1)不登校児がプライドを持って通える学校にすること、(2)ネットの通信高校として教師もリモートで教えられること、の2つを実現させたいという思いを持っていたが、生徒と教員が急増する中で、リモートワークを可能にする体制の構築に3年近い時間がかかり、このタイミングでの実現となったと説明する。
N高ではもともと、ITツールによって生徒の学校生活をサポートする「コミュニティ開発部」、生徒の就職や進学をサポートする「進路指導部」などを設け、教員の業務を分担していたが、その運用を続ける中で、SlackなどのITツールや電話によるコミュニケーションでも十分にリモートワークが成り立つことが分かったという。また、生徒や保護者からも一定の信頼を得られたことから、4月からの導入を決めたという。
出勤が困難な人の定義もさまざまだが、当初はシングルマザーを中心にリモートワーカーを募集する理由については、「(IT人材など給料や待遇などが)恵まれている人の特権ではなく、それでしか働けない人が世の中には存在する。そういった人に優先して仕事を割り当てたい」(川上氏)と思いを語る。また、抱えている課題や事情が近い人を採用することで、サポートについても共通化しやすいと説明した。
雇用形態は、「契約社員」と「アルバイト」の2種類。契約社員は、大卒以上で教育免許を取得していることが条件となり、担任補助業務と教務事務補助業務をする。勤務時間は1日最大8時間で、みなし労働時間制を採用する。給与は21万円で賞与は出ない。実績を積むことで、契約社員から正社員になることも可能だという。
教育免許をもっていない人はアルバイトでの雇用となり、教務事務補助業務のみとなる。勤務時間は9〜18時内の応相談で、時給は1000円から。N高から教員免許の取得支援も受けることができ、年間で15万円が支給されるという(最大4年まで)。教員免許が取得できた場合には契約社員として登用されるとのこと。
現在の教員数は60名強だが、4月には2倍の120名になる予定。そのうちの約1割をリモートワーカーにする予定で、軌道に乗ればさらに採用を増やすとしている。また、専門のプロジェクトチームを結成し、リモートワーカーの仕事を管理できる体制を作るという。
N高の校長である奥平博一氏は、「教員の事務作業を現在は担任がすべてやっているが、これを分担できれば負担が減る。教員と一緒にチームを組める方をリモートワーカーとして採用したい」と展望を語った。
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