インターネットを通じて生地や細かなディテールを指定し、シャツを発注できるサービスはいくつかあるが、「Original Stitch」を運営するシリコンバレー発のOriginalはオーダーメイドシャツだけはなく、テクノロジーを出発点にさまざまな事業に取り組んでいる。
創業当初は、ネットを通じた単なるオーダーメイドシャツの製作サービスから始まった。しかし、テクノロジーの進化は多様なアプローチでファッション業界に変化を与える。近年、テクノロジーで食や調理にアプローチする「フードテック」、睡眠の質にアプローチする「スリープテック」などが話題だが、ファッションに関しても「ファッションテック」と言えるいくつかの取り組みがある。
Original Stitchが取り組んでいるAI技術を用いた体系計測技術「Bodygram(ボディグラム)」も、そうしたファッションテックのひとつと言えるだろう。洋服を着たままの状態で写真を2枚撮影するだけでヌード寸法を高い精度で計測できるサービスだ。
体形測定技術としては、2017年にスタートトゥデイ(現在のZOZO)が発表した「ZOZOSUIT」が話題になったほか、カメラではなくモーションセンサーとAI技術を用いるイスラエル発の「MySizeID」、紳士服のコナカがカメラデータとAI技術を元にしてサイズを推定する「DIFFERENCE AI画像採寸アプリ」などがある。
カメラのみを使い、洋服の上から計測できるという点ではコナカのアプリに似ているが、DIFFERENCE AI画像採寸アプリはコナカが扱う洋服やアクセサリのサイズ計測を行うのに対し、Bodygramは1ミリ単位の計測値を提供する点、撮影回数が2回のみ(コナカのアプリは4回計測)という点が異なる。
Bodygramは、Original Stitchの発注時サービスとして活用するほか、アパレル事業者向けにSaaSとしての展開も狙っているという。実際の採寸を体験するとともに、Original FOUNDER&CEOのジン・コウ氏とOriginal Japan 取締役 COOの藤本学氏にBodygramと今後について話を聞いた。
「Original Stitchを事業化して、すぐに気付いたのはサイズ計測の問題だった」とコウ氏は話す。Original Stitchはウェブ上でデザインを選択すると、画面上で仕上がりをシミュレーションしながら、細かなディテールを指定したオーダーメイドのシャツを制作できる。
ユーザーIDを登録しなくとも、誰もが好みの生地を選び、3Dグラフィクスでの結果を楽しみながら操作できるユーザーインターフェースに力を入れた。
しかし、サイズ計測の問題は、Original Stitchだけでなく、洋服をオンラインで発注するあらゆるサービスの課題だ。
Original Stitchの場合、初回の注文時に身長や体重、好みのフィット感などを選ぶと、いくつかの初期設定からシャツのサイズが選ばれる。以降、二回目の注文からは、最初のシャツを目安に各所の寸法を修正し、自分の好みに近づけるというシステムだ。
しかし、この方法では実際に発注する際に尻込みする消費者も少なくないだろう。少なくとも筆者はそうだった。シャツであればスーツほど細かなフィッティングは不要なことはわかる。作られるシャツの寸法も確認はできるが、実際に試着がかなわない通信販売では大きなハードルだ。
そこで複数の自動採寸技術を試しながら、ユーザーにとって、もっとも負担が少なく簡単な自動採寸技術として、スマートフォンのカメラとAI技術を用いた採寸技術を採用。深層学習を用いて基礎技術を練り上げ、そこに実測データによる機械学習を組み合わせて精度を磨いていたという。
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