「今は金融機関として事業を展開しているが、将来的に、半分は金融、半分はテック系企業になる」――アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏は、12月25日に開催した記者会見で、こう宣言した。
アルヒは住宅ローンの貸し出し、取次業務などを手がける住宅ローン専門金融機関として、2000年に創業。2015年に現社名に変更し、2年半後となる2017年12月に、東証一部に上場を果たした。
全期間固定金利住宅ローン「フラット35」で8年連続シェアNo.1を獲得しており、住宅ローン市場全体における年間融資総額は現在第5位。浜田氏は「5年後には、日本No.1の住宅ローン融資会社になる」と意気込む。
強みに据えるのはスピードだ。通常2~4週間が必要となるフラット融資実行までの日数を最短3日に短縮したほか、クイック事前審査を最短1分で実施。実現の裏側には、住宅金融支援機構システムとのダイレクト接続やRPAなど、継続的なIT投資がある。
なかでもRPAは早くから取り組んでおり、住民票などの書類から読み取ったデータを元に、氏名や住所などを取り込む、作業の自動化を実現。現在トライアルの段階だが、2018年度中の本稼働を予定している。
「RPAの導入より、今まで熟練の担当者にしかできなかった業務を経験が浅い担当者でも対応できるようになる。このためIT化が進むと人の仕事はなくなる。ただしその会社が伸びている限りは、部署を異動したり、指導者になったりと、別の仕事に就くため、無職にはならない」(浜田氏)とし、今後も積極的なRPA化、AI化を進める考えだ。
スピードとともに、力を入れるのは中古物件への取り組みだ。浜田氏は「新築着工数は減少傾向にあるが、中古市場は増え続けている。中古物件をリーズナブルに購入し、リノベーションして暮らしたり、住み替えたりする、欧米のようなライフスタイルが日本で始まろうとしている」と現状を説明。さらに「人口減により、家を買う層は減っていくと思われがちだが、外国人やシニア、女性層などは拡大傾向にある。住み替えが進めば、家を買う回数も増える。これにより住宅ローン市場は縮まらない。住宅ローン市場はレッドオーシャンと見る向きもあるが、アルヒではブルーオーシャンと捉えている。この先も伸びる市場だと思う」(浜田氏)と分析する。
今後は、RPA化、AI化した事務インフラを、ほかの金融機関の事務を受託するという新領域「オペレーション受託事業」のほか、RPAとAIを使い、借り入れ可能額から始める「家探しサポート事業」、ライフイベントに応じた商品、サービスの開発、マッチングをする「ライフソリューション事業」の3つのプラットフォーム事業を本格化し、収益の柱に育てる計画だ。
12月27日には、住宅ローンの申し込みから融資実行までの過程を見える化した「ARUHI navi」の提供を開始。今まで不動産会社、営業担当者、司法書士、顧客と複数の関係者の中で伝言ゲームのように伝わっていた流れを関係者で共有し、システム管理することで、意思疎通の円滑化、作業の効率化に結びつける。
「フィンテックと不動産テックの両方をやっている会社は今の所ないが、その両方を取り組む会社になりたい。目指すのは住宅業界の“アマゾン”。この業界におけるインフラ企業になる」(浜田氏)と目標は明確だ。
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