YouTubeでのもう1つの人気ジャンルに「開封動画」があるだろう。「はい、では早速箱を開けてみたいと思います」と話しながら、おもちゃや製品などの箱を開けるところから始まり、遊ぶ様子などを紹介する動画だ。日本では、「せんももあいしーチャンネル」や「かんあきチャンネル」など、子どもが複数人登場して、楽しそうに遊ぶ様子を紹介するチャンネルの人気が高い。
海外でもこのジャンルは人気が高い。おもちゃの箱を開けて遊ぶ動画を公開している「Ryan ToysReview」「Ryan’s Family Review」に登場する8歳のYouTuberライアンは、2017年の1年間で推定2200万ドル(約25億円)を稼ぎ、YouTuberランキングの首位に立っている。「Ryan ToysReview」のチャンネル登録者数は1731万に上る。
小学生たちはやはり、おもちゃを手に入れた気持ちになって満足できるから見ている例が少なくないようだ。「売ってるカードを全部買って全部開ける動画が面白かった」という子がいた。「やってみたいと思ったことはあるけど、できないから」。子どもたちは、自分の願望を代表して叶えてくれるという意味で楽しんでいるというわけだ。動画は疑似体験の場であり、自分の欲望を代わりに叶えてくれる場でもあるのだ。
ティーン向けファッション誌「Popteen」は、YouTube、Twitter、Instagramだけでなく、TikTokの公式チャンネルを用意している。雑誌に登場するモデルがTikTokで踊ったり、表紙撮影の裏側などをYouTubeで配信したりしているのだ。人気女子高生YouTuber「ねお」さんを専属モデルに採用するなど、動画共有サービスから雑誌へファンを取り込もうという動きが目立つ。
Popteenではもともとモデルが彼氏とツーショットで登場することも多く、紙面でのモデルは、読者にとって身近で憧れるロールモデルとして存在してきた。動画共有サービスは、視聴者にとって身近に感じてもらえる効果がある。視聴者の声に応えるなど、リアルタイム性、インタラクティブ性がともに高いためだ。
これまでテレビなどのメディアと視聴者とは遠い存在であり、視聴者は一方的に情報を受け取るしかなかった。しかし、動画メディアと視聴者との関わりはそうではない。視聴者は、動画配信者を自分と親しいものとしてとらえているのだ。ゲーム実況動画や開封動画が人気が高い理由は、配信者と視聴者が心理的距離が近く、自分を投影しやすいことも要因の1つではないだろうか。
SNSの登場によって、配信者と視聴者の心理的距離が縮まっている。若者を理解するためには、彼らのこのような心理も理解しておくといいだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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