Netflixとソニーが、テレビの新たな画質モードを生み出した。ソニーが10月に発売した4K有機ELテレビ「ブラビア A9F/Z9F」シリーズには「Netflix 画質モード」を搭載。これは、クリエイターの制作意図を忠実に再現する画質が、自宅のテレビで視聴できるというものだ。11月30日、両社はNetflix 画質モードについて説明会を開催。新たな画質モードの開発にいたった背景や狙い、協業関係などについて話した。
Netflix 画質モードは、Netflixとソニーが共同で2年の月日を費やして開発。ドラマや映画、ドキュメンタリーといったNetflixで配信されている作品を見る時に、このモードをオンにすると、制作者が考えた通りの画質基準で視聴できることが特長だ。
「10年前のネット配信動画の画質は誰も良いとは思っていなかった。しかしネット環境が整い状況は変化した。Netflixは業界のリーダーとして高画質化を進めてきたと自負している」とNetflix バイス・プレジデント デバイス・パートナーエコシステムのスコット・マイラー氏は自らの立ち位置を示す。
Netflixは、スマートフォンやタブレット、PCなど、現在あらゆるデバイスで視聴ができる。「どのデバイスも重要だが、特に力を入れているのがテレビでの視聴体験。Netflix推奨テレビを選定するなど、利便性が高く高画質のテレビで見ることを推進している。事実、日本のユーザーの半分以上がテレビでNetflixを視聴しており、美しい映像をより大きな画面で見たいと望むユーザーは多い」とニーズを分析する。
Netflix 画質モードは、ユーザーの画質に対する思いと、映像制作者の「こう見られたい」という画質基準をつなぐ役割を果たす。ソニーが持つ映像のパラメータをNetflix側に開示し、最適な映像設定を探りながら作り上げていったという。
「開発する中で重要だったのは映像の“風合い”。今までの画質作りは、映像信号を正確に表現することにとどまっていたが、今回は映像の再生から再現に踏み込んでいる」とソニービジュアルプロダクツ 技術戦略室主幹技師の小倉敏之氏は話す。さらに「大事なのは伝送技術。映像圧縮時にノイズが出てしまったのは元も子もない。Netflixは高いエンコーディング技術を持ち、映像制作者の意図をきちんとテレビまで届けられる。雰囲気ごと、そっくりそのまま再現できるのがNetflix 画質モード」と表現した。
説明会では、Netflix オリジナル映画「クリスマス・クロニクル」のプロデューサーで、「ホーム・アローン」や「ハリー・ポッター 賢者の石」などの監督も務めたクリス・コロンバス氏が登場。マイラー氏、小倉氏とともにパネルディスカッションを行った。
コロンバス氏は「映画は撮影も大変だが、それ以上に時間がかるのがポストプロダクション。そこまで時間をかけて完成した映像作品をテレビで見ると全然違うものになっていてフラストレーションが溜まっていた。そのため、Netflix 画質モードを見た時には椅子から飛び出しそうになるほど驚いた。クリスマス・クロニクルではポストプロダクションに9カ月を費やしたが、そこで意図した通りの映像になっていた」とNetflix 画質モードを高く評価した。
さらに「映画館に行っても、映写室のドアを叩いてフォーカスや色合いが違うと言いたかったことがある(笑)。Netflix 画質モードでは映画館に行くよりはるかに良い体験ができると思っている」と、映画館以上の高画質が自宅で見られるとコメントした。
Netflix 画質モードは、2K、4K、HDRの対応、非対応などに関係なく、すべてのNetflixコンテンツで有効になるとのこと。オン、オフの切り替えが可能だが、一度オンにしておけば自動的に最適化する利便性も備える。
ソニーでは、今後発売するブラビアシリーズのテレビにもNetflix 画質モードの搭載を検討しているが、過去モデルへのアップグレード対応などは考えていないとした。
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