ゲームなどの仮想現実(VR)コンテンツを楽しむのに必要不可欠なヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、映像の描画性能が高いほど没入感が強まる。ただし、鮮明でフレームレートの高い映像を表示するには、HMDの映像回路を高性能化しなければならない。そうすると、使用中に温度が高くなり、顔に装着するデバイスとしては使いにくくなる。
そこで、Facebook傘下のOculus VRはHMDの温度上昇に対策する技術を考案。この技術を米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間10月25日に「SYSTEM FOR DISCHARGING HEAT OUT OF HEAD-MOUNTED DISPLAY BASED ON HYBRID FAN AND HEAT PIPE」(公開特許番号「US 2018/0307282 A1」)として公開された。出願日は2017年4月19日。
この特許は、プリント基板(PCB)を内蔵するHMDにおいて、PCBから発生する熱をヒートパイプで奪い、その熱をファンでHMDの外部へ放散させる技術を説明したもの。高性能なHMDだとPCBの発熱も多くなり、狭い内部に熱がこもるので温度が上がりやすい。ヒートパイプとファンで効率よく放熱できれば、温度上昇を抑えて快適に使えるだろう。
もっとも重要な第1クレーム(請求項)は、極めて基本的な内容。HMD内にPCBとヒートパイプ、ファンが存在し、ヒートパイプはファンの周囲を囲むように配置されると同時に一端がPCBにつながれ、ファンがHMDの背面から空気を吸引する、という記述しかない。第2クレーム以降に、詳細な構造、空気の吸入や排出に利用する開口部の位置といった説明が現れる。
第1クレームの範囲が広いため、ヒートパイプと冷却ファンを内蔵するHMDはこの特許と同じ構造になる可能性が高い。成立した場合には回避が困難なので、注意すべき発明だ。
なお、特許とは、技術的アイデアの権利保護を目的とした公的文書である。登録されて成立しても、実際の製品やサービスで利用されるとは限らない。さらに、アイデアの存在を公知の事実にする目的で出願され、登録に至らず公開止まりになるものも少なくない。
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