「東芝Nextプラン」発表--5年間で7000人の人員削減、2020年度までに赤字事業を撲滅

 東芝は11月8日、全社変革計画「東芝Nextプラン」を発表。2021年度には、売上高3兆7000億円、営業利益2400億円、ROSで6%以上、ROEで約10%を目指すことを明らかにした。また、2023年度のターゲットとして、売上高4兆円、営業利益8%以上、ROSで10%、ROEで15%レベルまで高める。

 東芝 代表執行役会長CEOの車谷暢昭氏は、「東芝は人の物真似ではなく、革新的な独自のテクノロジによって、143年間、成長してきた企業である。東芝のDNAである、2人の創業者によるベンチャースピリットを呼び覚まし、世界有数のCPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジ企業を目標にする。東芝Nextプランでは、最初の3年で業界トップレベルの収益体質に移行するとともに、有望な成長事業を展開し、すべての商品、サービス、プロセスにおいて、サイバー技術を実装する。これによって、目標を達成したい」と述べたほか、「2020年度までに赤字事業を撲滅し、すべての事業でROS5%以上を目指す」とした。

東芝 代表執行役会長兼CEOの車谷暢昭氏
東芝 代表執行役会長兼CEOの車谷暢昭氏

 また、東芝Nextプランの目的を「企業価値の最大化を通じて株主価値向上を実現する。その評価指標として、Total Shareholder Return(TSR)の拡大を重視する」とした。TCRは、キャピタルゲインと配当をあわせたものであり、株主にとっての総合投資利回りのことを指すという。

 東芝Nextプランでは、「構造改革」、「調達改革」、「営業改革」、「プロセス改革」の4つの改革を推進することを示した。

 「構造改革」では、液化天然ガス(LNG)事業や、海外原子力新規建設事業などの非注力事業からの撤退、今後5年間で7000人の人員減少による人員の適正化、15%の生産拠点を対象にした閉鎖および再編、約400社の国内外の子会社をそれぞれ25%削減することを計画している。

 「将来に向けて、事業および人員の適正化が前提となる。だが、足の長いビジネスも人員を一気に適正化することができない。年間3000人の自然減や、一部部門での早期退職優遇制度を実施する」とした。

 「調達改革」では、原価率の低減に向けた各種施策を実行。「東芝は、競合他社に比べて原価率が高いという傾向がある。直接材および間接材を対象にした調達改革によって、約650億円の改革効果を見込む」という。

 「営業改革」では、営業活動の効率化、営業体制の強化、プロジェクト受注時における審査の拡充を実施する。価格を含む契約条件の再確認と適正化、低収益製品の棚卸しなどの営業リターン改善により、約300億円の改善機会を追求。キーアカウントへの営業体制や、CRMの活用による営業体制の強化などによる顧客およびマーケットの関係強化、プロジェクト受注審査による将来リスクの未然防止につなげる。

 「プロセス改革」としては、IT基盤を整備するための投資を行い、グループ全体で業務を効率化し、生産性の改善を図る。次世代IT投資計画として、2023年度までに1100億円の投資を計画。「老朽化したシステムの80%以上を刷新し、90%以上のサーバーをクラウド化。CPSテクノロジ企業への変革を支えるにふさわしいIT基盤の構築を図る」とした。

東芝Nextプラン施策概要
東芝Nextプラン施策概要
東芝グループの目指す姿
東芝グループの目指す姿

デジタルトランスフォーメーションで「4万2000人の技術者全員をデジタル技術者に」

 デジタルトランスフォーメーションによる取り組みについても説明。「デジタルトランスフォーメーションによる、すべての事業領域を高付加価値化。デジタル文化を組織の隅々まで実装する必要がある。思考の仕方を変え、4万2000人の技術者全員をデジタル技術者にしてきたい。東芝のIoTリファレンスアーキテクチャーであるSPINEXの上に、さまざまな事業領域において実践した知識を結集。これをオープンにし、CPSテクノロジ企業として成長を目指す」という。

デジタル人材の育成
デジタル人材の育成

 さらに、既存事業に関しては、市場の成長性と競争力の観点で整理し、今後成長が見込まれる事業については適正な投資のものと、自律的な成長を目指すという。また、火力、システムLSI、産業モータ、モバイルHDDといったモニタリング対象事業は、事業構造転換により、収益を改善させるとした。

 新規成長分野においては、リチウムイオン二次電池で、SCiBの特徴を生かせる成長市場を開拓。パワーエレクトロニクスでは、デバイス技術の競争力を源泉に、モビリティ・産業システム市場で差異化を図る。また、精密医療については、ライフサイエンス分野で保有する技術を生かして、がんの超早期発見と個別医療治療の実現を目指すという。

 「これまではメモリ分野への投資が多く、投資をすれば成長が見込める分野への投資ができていなかった反省がある。今後、成長分野への投資を中心に、2023年度までに8100億円を投資。また、主要研究開発テーマに対して、2023年度までに9300億円を投資。10年後、20年後の東芝に向けた投資も行っていく」と述べた。

 SCiBでは、2030年に4000億円規模の事業を目指すほか、パワーデバイスでは、モビリティと産業領域に注力し、システム全体として差異化を図る。また、がん治療領域においては、重粒子線治療をはじめとして、予防から治療までの各フェーズにおける要素技術を保有している強みを生かすという。

 さらに、東芝Nextプランの実行のための仕組みを構築。新規事業を創出する新たなインキュベーションの仕組みを導入し、コーポレートベンチャーキャピタルとして100億円規模のファンドを設定するほか、デジタルトランスフォーメーションを推進するための人材育成、外部人材の登用を進める。また、事業運営体制の強化および意思決定の迅速化のために、事業部の大括り化、階層のシンプル化などの組織の見直しを図り、内部統制機能の強化に向けて、コーポート部門による統制機能の拡大と強化を図る。執行役の業績連動の過半を譲渡制限付株式報酬で支給するという。

 「東芝の従業員一人ひとりがNextプランにコミットして、やるという気持ちをそろえることが大切である。東芝グループの経営理念は、『人と、地球の、明日のために』。この経営理念のもと、東芝Nextプランの実現により、ステイクホルターの期待に応え、社会のさらなる発展に大きく貢献したい」と語った。

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