自動運転車の支持者と反対者の双方が好んで投げかける疑問がある。それは、事故が避けられない状況で、自動運転車は誰を救い、誰を見殺しにすべきか?というものだ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)はその疑問の答えを見つけるために、230万人を対象に調査した。
最大のポイントは、さまざまな国、文化、社会集団に属す回答者が、それぞれ異なる回答を寄せたことだ。
この論文の共著者でMITのコンピュータ科学者、Iyad Rahwan氏は「機械倫理について考える人々は、完全なロボット原則を作り出せるかのように言うが、われわれがデータで示すのは、普遍的なルールなどないということだ」と語った。
10月24日に「Nature」誌に掲載されたこの論文では、「The Moral Machine」と題するオンラインアンケートで世界中の参加者に、有名な倫理学の思考実験「トロッコ問題」と同様の、さまざまな状況での二者択一の回答を求めた。例えば、子どもたちと老人たちのどちらに衝突するべきか、あるいは、ホームレスと企業幹部だったらどちらを選ぶべきか?
全般的には、回答者は特定の原則に従うことが分かった。MITは24日に発表したニュースリリースで、全体的な傾向として、自動運転車は「動物よりは人間を、少人数よりは多人数を、高齢者よりは若者を」救うべきだと答えたと語った。
だが、興味深いことに、どちらを優先させるかは、回答者の居住地域と文化的規範によって異なった。フィンランドや日本のような、「比較的治安の良い豊かな国」の回答者は、例えば交通規則を無視して道路を横断するような人は殺されてもいいと答える傾向が強かった。そして、経済格差が激しいコロンビアでは、成功した企業幹部よりホームレスが死んだ方がいいという回答が多かった。
研究者らは、回答者を東、西、南の3つの地理的および文化的グループに分けた。上記の他に分かったグループによる違いとしては、アジアを含む東の回答者は、北米や西欧の人々よりも高齢者を優先させる傾向があった。一方、南アフリカを含む南のグループには他のグループよりも女性を救うべきだという回答者が多かった。
自動運転車の開発者にとっての要点は、自動運転車のための倫理指針を定めるのは困難だということだ。自動運転車はどんな代償を払ってでも絶対に事故を避けるべきだと言うのは簡単だ。だが、怪我や死を避けられず、選択を迫られた場合のためのルールを決めるのは難しい。
論文の筆頭筆者でMITの研究者であるEdmond Awad氏は声明文で「この論文の目的は、自動運転車が指針とすべき道徳的決定について理解することだが、まだ答えは見つからない」と語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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