農業従事者は、諜報員と少し似ている部分がある。農業で成功を収めるには、自分の地域だけでなく世界中の同業者の動向にしっかり目を光らせておく必要があるからだ。作物の多様性や施肥のスケジュール、予想収穫高といった重要な情報が、戦略や収益に多大な影響を及ぼす可能性がある。
農業がますますテクノロジ主導になっていることから、世界の動向を追うためのアプリが出てきても何ら驚くことではない。
ベラルーシに本社を置く精密農業のスタートアップであるOneSoilは、欧米43カ国の農場の衛星画像に人工知能(AI)アルゴリズムを適用した世界地図を公開した。今後さらに範囲を拡大していく計画だ。AIが衛星画像を分析し、作物の種類や発育サイクルといった情報を見極めるのだという。
「世界人口は増加の一途をたどっているが、農地の規模は変わらない。増大する人口のニーズに対応する食物を供給するには、農業はこれまで以上に効果的でなければならない」と、OneSoilの最高経営責任者(CEO)で共同設立者でもあるSlava Mazai氏は述べた。「OneSoil Mapは、作物生産における局地的および世界的なトレンドを明らかにし、農産業に従事する全ての人がそういったトレンドを把握できるようにするために開発された。地域と全国の両方の規模で市場実績を予測し、農学者や農場経営者、トレーダーがスマートな意思決定をするうえで役立つ」と同氏は述べている。
リアルタイムの情報に加えて、OneSoilの地図を使えば、農業者は田畑が過去3年間でどのように変わってきたかを確認することができる。同社は、欧州宇宙機関(ESA)とオープンソースのマッピングプラットフォームであるMapboxの公開データを利用して、この機能を実現させた。
農業界は多くのAI技術を積極的に取り入れてきている。予測分析や、自律ロボットや農地土壌モニタリングなどの技術が、あらゆる規模の農業者の栽培における決定の下し方を変えてきた。
OneSoilの地図はAIや深層学習モデル、コンピュータビジョンを用いて田畑の境界を自律的に検出し、特定の視覚的特徴に基づいてどういった作物が育つかを予測する。
衛星画像の視覚分析に基づいて収穫高を予想することもそのうち可能になるかもしれない。そう遠くない将来、そういったシステムが、農業者に肥料や水をまくスケジュールについてきめ細かい洞察や提案を提供し、予測が難しいことで知られる農業界から当て推量を排除できるようになることもあり得る話だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」