大事なのは人です。事業プランが素晴らしくても、提案者ではなく別の適任者に任せたいというケースも少なくありません。そのため、事業プランと人の両方を踏まえて判断を下します。いつも悩まされるのはエンジニア不足でしょうか。弊社の新規事業は責任者と担当役員を任命し、次に必要となるのがエンジニアやデザイナーです。優秀な人材は他事業で活躍しているため、最近では弊社を辞めてフリーで活躍している方に協力していただきました。
リリースタイミングは事業責任者に任せています。事業開始時にロードマップやKPI(主要業績評価指標)を用意しつつ、当初想定した仮説に需要があるのか、プロダクトマーケットフィットに到達するのかなどを、数カ月ごとに再確認してきました。後はスケジュール的な問題も判断要素に加えつつ、KPIを満たしても需要がなければ、リリース前に撤退することも珍しくありません。
効果測定については、事業ごとにバラバラになっていたため、統一した形式で年1回の事業計画書を作成してもらっています。その上で3カ月ごとに事業計画自体を見直す、または数値だけ変更して続行する仕組みを加えていました。
——新規事業という文脈において、過去に失敗と思えるケースはありましたか。
やって失敗したパターンと、やらなくて後悔したという2つの失敗があります。前者はフィーチャーフォンのソーシャルゲーム事業でした。多くのプレーヤーが並び立つなか、周回遅れで取り組みましたが、形になりませんでした。
この経験で気づいたのは、企業の事業領域は得手不得手があり、われわれの場合はゴールドラッシュのように事業を掘り当てるのは得意ではありません。皆が気づいていない領域を半歩先に見つけて仕込んでいく。もしくは、一度勝負が見えてゲームルールが変化するタイミングの方が、われわれには合致していると感じます。
後者は2003年頃の話ですが、ブログ特化型の検索エンジンを作ろうとしていました。当時は検索エンジンが事業として成長するという意見も少なく、見送りましたが、もし取り組んでいれば弊社は検索エンジンの会社になっていたかもしれません。ただ、現在は分野特化型検索エンジンは皆Googleに集約されているため、事業としては難しかったと思います。
——今後の注力領域を教えてください。
大きく分けると3つです。1つはHR関連領域。弊社は学生と企業のつながりを支援する「サポーターズ」を手がけていますので、こちらを足がかりに注力します。
もう1つはEC領域。ダイレクトコーマス以外にも、イオングループの家事宅配「カジタク」のようなサービスにも注力しようと考えています。こちらはハウスクリーニングを提供するサービスですが、彼らは店頭パッケージとコールセンターで対応していました。ネット注文の部分をわれわれが担っています。カジタクは当初の想定よりも事業として成長しました。
最後はFinTech領域。仮想通貨はいろいろ世間をにぎわしていますが、主に現在は、専用ファンドに外部LP(投資家)が参加する事業「SV-FINTECH Fund」と、先日、レンディング(貸し仮想通貨)サービス「CoinOn」も立ち上げ、進めています。
このように、事業領域はインターネットが絡むのであれば特に制約は設けていません。最近では通販コスメを手がける「ViTAKT(ヴィタクト)」がユニークな例でしょうか。ECナビに出稿いただく企業には化粧品会社が多く、マーケティング主体のビジネスになっていることに気づきました。製造はOEMにお任せすれば、われわれでも製造直販モデルで化粧品を提供できると思い、挑戦しています。
——最後に、新規事業に大切なことは何でしょうか。
やはり「狂気と情熱」ですね。ゼロから1を生み出すのはロジックも必要ですが、「これを形にするんだ」という情熱と社内外を巻き込みつつ動かす勢いが必要です。初期段階においてはこの言葉に尽きますね。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
トラディショナルからモダンへ進化するBI
未来への挑戦の成功はデータとともにある
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境