内閣府、「宇宙ビジネス」のすそ野を拡げる実践重視型セミナーを全国で開催へ

 「宇宙」をキーワードに新産業やサービス創出に関心をもつ、企業や個人、団体らの活動の支援を目的に、内閣府宇宙開発戦略推進事務局(以下、内閣府)が立ち上げた「S-NET」(スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク)は、業界の最新動向紹介や個別相談会などを実施する「S-NETセミナー・ワークショップ」を全国で開催する。

 民間企業やベンチャーの新規参入を促進して産業全体のすそ野を拡げ、現在1兆2000億円規模の国内宇宙産業を、2030年早期に倍増することを目指す。ここでは、大阪の関西大学梅田キャンパスで開催されたプログラムの内容を紹介する。

「宇宙ベンチャーの新規参入はここ数年で活発化し、政府も民間の支援に力を入れている」と説明する内閣府の高倉秀和参事官
「宇宙ベンチャーの新規参入はここ数年で活発化し、政府も民間の支援に力を入れている」と説明する内閣府の高倉秀和参事官

 従来の宇宙ビジネスについて、内閣府の高倉秀和参事官は「国家主導で高度な技術と巨額の投資が必要であったことから、一部の大手や専門企業が中心だったが、最近は宇宙ベンチャーの参入が活発化している」と説明。すでに、衛星データを活用して農産物の品質を高めたり、石油の備蓄量をリアルタイムに推計して先物投資情報として提供したりする動きもあり、世界初の高精度衛星測位サービスも間もなくサービスインすることなどが紹介された。

衛星データを活用したビジネス例
衛星データを活用したビジネス例

 ビジネスの育成に向けた具体的な取り組みとして、投資マッチングをする「S-Matching」や、ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」を開催するなど、事業化までをトータルにサポートできる仕組みが用意されている。2016年3月に創設されたS-NETの活動はスタートアップ段階の支援が中心で、「異業種交流の支援やセミナー、相談会などを通じて関係者同士のネットワークを拡げ、それをきっかけにビジネスモデルの実証実験が行われたり、さまざまな産業新興プロジェクトを実施」(高倉参事官)している。

政府による宇宙ビジネス支援体制のまとめ
政府による宇宙ビジネス支援体制のまとめ
ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」は昨年に300件を越える応募があり、11月19日に最終選考会が行われる
ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」は昨年に300件を越える応募があり、11月19日に最終選考会が行われる

 そうした動きに対し、安倍内閣は3月に、今後5年間で官民あわせて約1000億円のリスクマネーを供給することを含む、宇宙ベンチャー育成のための支援パッケージを発表している。これらの活動は、情報ポータルサイト「S-LINQ」から発信され、誰でも利用できるようにしている。

 内閣府とS-NETを共同運営する経済産業省の宇宙産業室に所属する國澤朋久室長補佐は、「宇宙利用産業のユースケースを拡大し、新たな需要を創造するエコシステムの構築が必要だ」と説明する。宇宙事業をより多くへ還元するために、衛星地球観測、衛星測位、ロケット打ち上げという3つのサービスや、政府衛星データのオープン&フリー化を進めていることが紹介された。

 現在準備中の「Tellus」は、画像だけでなく解析に必要なソフトウェアやマシンパワーも提供し、クラウドとリモートで活用できる衛星データプラットフォームで、2018年度中にプロトタイプ公開が予定されている。運営にあたっては、さくらインターネットを中心にメルカリなど民間主体に21の団体や組織が参加する「xDATA Alliace」を発足し、使えるサービスにすることを目指している。

7月31に発表された衛星データプラットフォーム「Tellus」
7月31に発表された衛星データプラットフォーム「Tellus」
衛星データプラットフォームの利活用促進のために発足した「xDATA Alliace」は民間中心に構成されている。
衛星データプラットフォームの利活用促進のために発足した「xDATA Alliace」は民間中心に構成されている。

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