S-NETの活動には、ビジネス相談窓口としてのサポートも含まれており、宇宙技術や衛星データを利用した新サービスの事業化をアイデア段階から支援する日本初のプラットフォームとして30年活動を続ける非営利団体の宇宙ビジネスコートが、2017年11月からその役を担っている。コーディネーターの持田則彦氏によると、相談される相手は中小企業から自治体まで幅広く、「これまで宇宙に全く関係したことがない相手をゼロからヒアリングしてビジネスを立ち上げることもある」という。
対応も幅広く、ものづくり企業と一緒に宇宙製品の開発が可能かを検討したり、IT事業者向けに初心者を対象とした衛星データを活用するセミナーを開催するなどしている。事業化の事例としてオスカープロモーションと異業種5社をつなぎ、エンタメ宇宙TOY「ENJOY ONE」を開発したプロジェクトを紹介。また、未経験から起業をアドバイスしてきた日本初の宇宙商社「SpaceBD」は、設立から1年経たずに宇宙ステーションの日本実験棟から超小型衛星を放出する初の民間事業者に選定された例もあり、こうした実績をS-NETでも生かしていきたいとしている。
セミナーでは、宇宙ベンチャーとして活躍する会社の代表らによる事業例も紹介された。火星探査機の開発研究者から転身して、子ども向けに宇宙飛行士体験や惑星アート、モデルロケット教室などを開催する事業をスタートさせたうちゅう社は、宇宙について知ることから学ぶ楽しさを知ってもらうことを事業目的としている会社だ。また、そこから衛星データを発展途上国の農業支援に活用するSAgriを新たに立ち上げ、従来のビジネスに宇宙産業を組み合わせることで社会貢献につなげようとしている。
創業50年の歴史を持つひびき精機は、人工衛星に必要な精密切削加工で宇宙産業へ参入し、流れ星を人工的に作る「シューティングスター・チャレンジ」プロジェクトに参加しているほか、堀江貴文氏の民間ロケット開発会社インターステラテクノロジーズに部品提供をしている。宇宙産業のような高度な技術が求められる分野では注文通り作っても仕事にならず、柔軟な発想ができる若手多能工の育成にも力を入れているという。
準天頂衛星を利用した高性能のGNSSを実現するモジュールを低価格で開発するマゼランシステムズジャパンは、世界に数社しかない技術を持ち、数センチ単位での自律運転システムの構築を可能にしているという。自動運転耕耘機やドローンの開発などに採用され、宇宙開発利用大賞を受賞している。
このほか同日のイベントでは、地球観測衛星データの活用に関する専門技術などを解説。また後半では、セミナーの内容を受けて、リモートセンシングの基礎知識と大容量衛星データを利用するための基礎的な実習を行うワークショップやアイデアソン、個別の宇宙ビジネス相談会も設けられた。
S-NETでは11月中に大阪と同様の構成となるセミナー・ワークショップを、仙台、福島、福岡で開催する。また、2019年には東京でも別プログラムを開催する予定。詳細は公式サイトで確認できる。
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