「Android」を搭載する最初のスマートフォンとなった「T-Mobile G1」は、象徴的なデバイスだ。だが、スライド式のフルQWERTYキーボードと幅の広い“あご”を備えたこのデバイスは、魅力的ではない。
10年前のデビュー当初、この初代Androidスマートフォンは、かさばって無骨な製品だとみなされた。批評家たちは滑らかに動くAndroid OSは評価したが、ハードウェアの方は同時期にデビューした初代iPhoneのようには普遍的な賞賛を得られなかった。
当時の米CNETのレビューでは「G1は洗練されたデバイスとは言い難く、セクシーだとも言えない。代わりに浮かぶ形容詞は“興味深い”や“奇妙な”だ」と評された。
だが、時はG1に優しい。「iPhone XS Max」と「Galaxy Note9」の横に並べて置いてみると、G1はかわいらしい。変に見えていた幅広いあごも、最近のプラスティックやメタルの板の洪水の中では独特だ。
だが、この外観は当初計画されていたG1の姿ではない。HTCとGoogleが最初のAndroidスマートフォンの共同開発を始めた段階では、両社はBlackBerryにかなりよく似た、小型で角張り、前面の上半分にディスプレイを、下半分に物理キーボードを備えるデザインで進めていた。
これは、HTCの共同創業者で元最高経営責任者(CEO)のPeter Chou氏から聞いたエピソードの1つだ。Chou氏は、当時GoogleでAndroidを担当していた幹部のAndy Rubin氏とともにG1開発を率いていた。私はG1誕生10周年に当たり、Chou氏にこのデバイスの開発についてインタビューした(Googleはインタビューの申し出を拒否した)。
あなたが知らないであろうG1の幾つかのエピソードを紹介しよう。
G1の最初のプロトタイプは、T-Mobileの「Sidekick」のようなスライド式キーボードを備えてはいなかったとChou氏は語った。最初のデザインは、もっと大型の、「BlackBerry 5000」シリーズのような外観を求められた。
Rubin氏の広報担当者は、2種類のデバイスを並行して開発していたことを認めた。最初の、「Sooner」というコードネームのデバイスは、HTCの「Excalibur」(T-Mobile Dashとして知られる、2006年発売のWindows Mobile搭載デバイス)の筐体を使ったという。
Chou氏はこのプロトタイプのことをDashだと語ったのだ。
Soonerは、必要であれば「すぐに(sooner)」出荷できるようにという考えで社内開発で使われた。このデバイスのディスプレイはタッチ対応ではなかった。
当時、BlackBerryシリーズは企業の間で人気があったので、この動きは論理的だ。
2台目のデバイスは「Dream」というコードネームだった。こちらは新しいデザインとタッチスクリーンを搭載するため、開発により時間がかかりそうだった。こうした意欲的な選択をみると、コードネームの由来は自ずと分かるだろう。
Androidチームは明らかに、野心的な方のG1のデザインを採用したということになる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」