音楽×テックで今起きていること--エイベックスがピコ太郎からTikTokまでわかる勉強会 - (page 2)

ピコ太郎は短く、シンプルがコンセプト、「世界は意識せずに作った」

 続いて、日本のエンターテインメントを築いてきた4人によるパネルディスカッションも開かれた。テーマは「日本の現状、そしてどうグローバル化していくか」。楽曲配信サービスを手がけるTuneCore Japan/Wanoの代表取締役社長である野田威一郎氏、アーティストマネジメントカンパニーを運営するアソビシステム 代表取締役の中川悠介氏、動画投稿アプリ「Tik Tok」を提供するByteDance グローバル・マーケティング本部長の井藤理人氏に加え、芸人ピコ太郎のプロデューサーである古坂大魔王氏が顔をそろえた。引き続きモデレーターはMoczydlowsky氏が務める。

左から、古坂大魔王氏、ByteDance グローバル・マーケティング本部長の井藤理人氏、アソビシステム 代表取締役の中川悠介氏、TuneCore Japan/Wanoの代表取締役社長である野田威一郎氏、Techstars Music Managing DirectorであるBob Moczydlowsky氏
左から、古坂大魔王氏、ByteDance グローバル・マーケティング本部長の井藤理人氏、アソビシステム 代表取締役の中川悠介氏、TuneCore Japan/Wanoの代表取締役社長である野田威一郎氏、Techstars Music Managing DirectorであるBob Moczydlowsky氏

 Moczydlowsky氏は、古坂氏に対し、いかにしてピコ太郎のヒットが生まれたのかについてまず聞いた。古坂氏は「最初から世界に向けて作っていない。英語の歌詞だが、日本人でも知っている言葉の組み合わせで、作っている時は英語だという認識もなかった。意識したのは、余計なものを省くこと。みなさん毎日忙しいので短く、シンプルに作った」と曲作りの背景を明かした。

 ピコ太郎同様に、今やグローバルで人気を集めるアプリTik Tokについては「かなりパワフルなUGC(User Generated Contents)プラットフォームだが、競合は」とMoczydlowsky氏は問いかける。井藤氏は「Tik Tokは中国から始まった。SNS文化の中で活字は写真になり動画に変わった。それがセルフィー文化と融合し、音楽やBGMをつけてコンテンツとしてできあがったのがTik Tok。デバイスが進化したおかげで15秒ですごくかわいく、楽しく、かっこよく、目立つものが作れるようになった。今の段階で競合はいないが、当然出てくると思っている。すでにFacebookやInstagramでも同じような機能をつけてきている」と冷静に分析する。

 また「地域ごとに違いをつけることはなく、ユーザーが楽しめて面白い、共通のUGCプラットフォームとして提供していく。人気コンテンツは、日本で火がついたものが韓国に飛び火したり、中国のものが韓国で流行ったりと非常にグローバルに広がっていく。それがTik Tokの魅力の1つだと思う」(井藤氏)と基本姿勢を話す。

「日本発で世界に広まったソニー、トヨタの先をやりたい」

 一方、日本のアーティストを海外でも活躍させているアソビシステムには「国内と海外でアプローチの仕方について違いはあるか」と尋ねる。中川氏は「曲も日本語のまま持っていっているし、基本は一緒。考えているのは、パナソニック、ソニー、トヨタなどが日本発として世界に広めたものの、その先をやりたい。こうしたメーカー以降、日本が世界に広めたものは生まれていないように思う」とコメント。さらに「(海外に)出していきたいのは日本のコンテンツパワーの素晴らしさ。アーティストとプロデューサー、さらにアートディレクターのコラボが素晴らしいコンテンツを生み出す。そうしてできた力のあるコンテンツは、海外の著名人の目に止まり、SNSで拡散され、認知を得られる」と、海外で成功した経緯を明かした。

 Moczydlowsky氏はアーティストの発掘にも触れた。「日本の若者が今後ポップスターになるためには」と聞くと、井藤氏は「日本人のTikToker(ティックトッカー)は出てきている。しかし、日本の音楽が必ずしも強いかというとそうでもない。パナマやノルウェーのバンドなどが人気がある。TikTokerが使う音楽は彼ら、彼女らのアンテナにひっかかったもの。非常にオーガニックなプラットフォームだ」と説明した。

 古坂氏に対しては「日本のエンターテインメントコンテンツがグローバルで競争力を上げるにはどうしたらいのか」と問いかける。古坂氏は「例えば日本のアニメは海外でも非常に人気がある。多分それは日本のアニメに細くて深いこだわりがあるから。日本人は何か一つを深く掘ることが得意。アニメは独自に進化したガラパゴスコンテンツ。海外を視野に入れなかったからこそ、海外で人気を得た。あまり海外をリスペクトせず、自信を持つことが大事」と独自の視点を披露した。

 最後にMoczydlowsky氏は「日本市場に投資をしたいと考えている私にアドバイスをしてほしい」とリクエスト。野田氏は「とにかく人に会うこと。エンターテインメント分野はエンジニアに出会いにくい側面を持つが、そのコミュニティに入り込んで、出会うことが必要」とエンジニアとの接点の重要性を説く。

 中川氏も「日本ではテクノロジを作るエンジニアとコンテンツを作る人が別の世界にいる感じを受ける。さらに、芸能界や音楽業界は、スタートアップとの距離がすごく遠い。この距離感を縮めることが日本に足りない部分だと思っている」と続け、エンターテインメントとテクノロジの距離感について話した。

エイベックス CEO直轄本部 新事業推進グループ チーフプロデューサーの長田直己氏
エイベックス CEO直轄本部 新事業推進グループ チーフプロデューサーの長田直己氏

 井藤氏は「アーティスト、クリエーター、エンジニアと日本のエンタメ業界は、ある意味縦社会で横のつながりがない。新しいプラットフォームを作る時には、そのブリッジになるような仕組みが必要になる」と続け、構造変革の重要性をアピールした。

 エイベックス CEO直轄本部 新事業推進グループ チーフプロデューサーの長田直己氏は会の冒頭に「ストリーミングサービスの登場で、音楽市場は再び盛り上がってきている。すでに世界では市場が反転し、日本は出遅れたが、今後間違いなくV字反転するだろう。このストリーミングサービスと連携したスタートアップの登場でさらにストリーミングサービスは浸透し、コンテンツホルダにとっての市場が増えてきている。こうしたイノベーションが音楽市場を最終的に広げていく。アーティスト/クリエ―ターとユーザーの間のエンゲージメントが音楽ビジネスのすべて。力を合わせ、情報を共有し、音楽の未来を作っていきたい」と今回の主旨を説明。日本の音楽ビジネスにおけるエコシステムの確立を訴えた。

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