——最初の頃と比べて製品自体も改良されているそうですね。
グローバルWiFiのレンタルで提供しているのは古いバージョンなんですが、いま一般販売しているものは新しいバージョンです。古い方は半日でバッテリが終わるところ、新しいものは3日間もって、電源ボタンを押して1秒くらいで使い始められます。音声入力してから翻訳音声が出てくるまでゼロコンマ数秒と、実使用時のレスポンスも向上しています。
——個人向けのiliの翻訳音声は小さな女の子のような声です。この声を選んだ理由は。
現地では翻訳を間違えてしまうことがありますし、初対面の人と話すとき相手の反応が怖い場合もあるじゃないですか。そういうときに「てへぺろ」となれるかどうかが重要だと思うんです(笑)。誤ってまったく異なる意味の言葉を聞かせてしまったとしても、子どもっぽい声なら冗談で済ませられます。iliはコミュニケーションの“きっかけツール”みたいなところもあるので、ヘンに真面目になりすぎずに、間違ったときでも笑える空気を作れるようにこの声にしました。一方で法人向けは“おもてなしをしっかりする”という目的ですので、大人っぽい声にしています。
——ユーザーの翻訳精度に対する満足度はどうですか。
旅行用の個人向けiliに関しては、まだまだこれから精度が伸びる余地はあると思います。第2世代のエンジンを積んだ法人向けili Proの方は、翻訳機能だけで言えばほぼオンライン翻訳並みです。音声認識のところもいま新たなエンジンを開発していて、そちらもオンライン並みになるところまできています。2カ月に1回アップデートしているので、徐々に精度は上がってきています。
——その法人向けのili Proは、7月末から利用受け付けを開始しました。誕生の経緯と、どういった機能がポイントとなるのか教えてください。
iliを販売してから、インバウンド事業者から使いたい、接客で使いたいという要望がかなり多かったんです。僕らとしては旅行向けとしているのですが、頑張って接客に使おうとしている方もいました。なんとかうまく使えているところもあれば、全然接客に使えないという方もいたんです。もちろん旅行向けであって接客向けではないので、十分に使えないのは仕方ありません。
ただ、あまりにもそういうやりとりが多かったので、インバウンド事業者向けも少しずつ作り始めて実証実験も行いました。そのなかでは特に、短い言葉で話しかけるだけで長文の説明ができるiliショートカットという機能が評価され、法人の方からは「これなら使える」という声を多くいただきました。インバウンド事業者はすでにスマートフォンや他のオンライン翻訳のツールを試していて、結局スムーズに使えなくて諦めています。ところが、iliショートカットだとみなさん結構うまくいっています。
それに、このiliショートカットは、導入の目的が定まりやすいメリットもあります。店舗の現場スタッフがいきなり翻訳機を渡されても、「今までこんなのなくてもできたし」とか「仕事を増やさないで」などといってスムーズに導入できないことが多いんですね。でも、iliショートカットを使えば、たとえばレンタカーの営業所だと、「保険の説明」と言うだけで、保険やガソリン満タン返却の説明を外国語で簡単に再生できるようになります。そうやってスタッフの説明の手間が省けるとわかると、一気にili活用の目的意識が定まるんです。
——法人向けのニーズとしては他にどのようなものがありますか。また、ili Proの無料体験申し込みの状況も教えて下さい。
飲食店が最も多く、あとは宿泊施設やタクシー、バス、小売店などですね。意外だったのは病院からの申し込みも多かったことです。外国人の方が保険証なしで診察を受けて、未払いのまま帰国してしまうという問題もあるので、受け付けでの事前説明で活用されているようです。
無料体験申し込みは好調です。当初は200社に限定していましたが、あまりにも申し込みが多くて、上限に関係なく在庫がある限り提供させていただくことにしました。法人向けでこんなに台数が出ることになるとは、僕自身想像もしていませんでした……。
——最後に、iliを利用しているユーザーやこれから使ってみようと思っている人へメッセージをいただければ。
僕は自撮り棒のような効果を狙っているんです。iliのようなデバイスは、最初は使うのが結構恥ずかしいんですよね。買ったはいいけれど現地では恥ずかしかったので使わなかったとか、そういう声も聞きます。でも、海外ではiliをすでに知っている人も多いよ、と言いたいんです。
世界的に翻訳機市場が盛り上がって、iliを含め翻訳機を使う文化ができ始めています。自撮り棒もいまや目にしたところで驚きませんよね。翻訳機も世界ではそういう雰囲気になっています。恥ずかしがらずに、相手がiliのことを知っていると思って使ってみてください、ということを伝えたいですね。
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