「失われた40年」にしないために--中島氏と夏野氏が話す「iモード」誕生秘話から教育制度見直しまで - (page 2)

加納恵 (編集部)2018年08月31日 08時30分
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日本でなくすべきなのは非正規雇用ではなく、正規雇用制度

 iモードは転職組の力もあってこそ実現した新サービス。夏野氏もNTTドコモに転職する形でiモードの立ち上げに携わった。一方の中島氏もNTTから、設立したばかりの日本マイクロソフトに転職した経験を持つ。「今となっては先見の明があったね、などと言われるが、あの頃考えていたのはプログラムが書きたいということだけ。当時のNTTは仕様書を作るだけで、プログラムを書くのは別会社。それではつまらないと思った。ありがたいことに引き止めてくれる声もあったが、その時言われたのは『年金がもったいないよ』と。まだ若かった私に20年後の年金の話をされても正直ピンとこない(笑)」と転職当時について話す。

 日本には、大手企業の中に「もっといいものを作りたい」と思う優秀な人材が眠っているという。夏野氏は「なぜ眠ったままなのかと思っていたが、日本の大企業の法則がわかってきた。20代は個人ではできない大きな仕事を与えられ、やる気がみなぎる。30代になると部下ができ、人を使えるようになる。このときはまさに自分が会社を回しているくらいの気持ちがあり、がんばれる。それが40代になると、これしか仕事をしていないのにこんなに給料をもらってよいのかと、価値が逆転する。で、その40歳を超えた瞬間にこれだけもらえるんだったら、このままいると楽かもな、と」と自身の分析を披露した。

「ベンチャーに対して言いたいのは、ビジョンはあるか、ということ。熱い思いに人もお金も集まってくる」と中島氏
「ベンチャーに対して言いたいのは、ビジョンはあるか、ということ。熱い思いに人もお金も集まってくる」と中島氏

 さらに夏野氏は「日本に必要なのは非正規雇用をなくすことではなく、正規雇用をなくすこと。例えば最長雇用制度を10年までとしたら、生産性は上がる」と説明する。日本企業の管理職率の高さについて中島氏は「野球でいうと、ベンチに監督とコーチばかりな感じ」と表現した。

 大手企業に続き、日本のベンチャー企業についても言及した。中島氏は「ベンチャーに対して言いたいのは、ビジョンはあるか、ということ。ビジョンがないから、似たようなビジネスをやるベンチャーが次々に現れる。ビジョンとは熱い思いがあること。その思いに人もお金も集まってくる」とエールを送る。

 続いて夏野氏も「日本のベンチャー企業は、同じような年齢構成の会社が多い。CEOより年上の人がいないケースもある。自分よりも能力の高い人を採用したくない人も多いだろう。しかし年代、経歴、経験と対応力があるほうが会社は強い。シリコンバレーのベンチャーは年齢もバラバラ」と米国の現状を踏まえて話した。

テスラユーザー2人が考える日本の自動運転

 次のテーマは「自動運転」。中島氏、夏野氏はともにテスラユーザーだと言う。中島氏は「自動運転が実用化されれば世の中は変わる。自動車は持つものから呼び出して使うものになる」と言い切る。

 これに対し夏野氏は「日本はレベル3(条件付き自動運転)、4(高度自動運転)を目指すのではなく、レベル2.5(レベル2は部分運転自動化)の世界を一度作るべき」という持論を話した。

 夏野氏が考えるレベル2.5の世界は、高速道路を自動運転化し、一般道は通常運転にするというもの。「高速道路は人間が運転するより、自動運転のほうがはるかに安全。しかし一般道では大渋滞が起こるだろう。そのため、一度レベル2.5の世界を目指して、その後にレベル4に持っていったほうがいい」とする。

 一方、中島氏は「スマホのアプリなどを使ってボタン1つで呼び出せる乗り合いバスサービス『バス2.0』を作りたい。すぐに車が迎えにきてくれる世の中にしたい。ただそれを自動運転で作ろうとすると今後10年では作れないので、もう少し別の形で実現したい」と、新たな車社会を提案した。

 対談のテーマは「働き方」にも及んだ。夏野氏は「江戸時代の労働時間である約5000時間に対し、現在の労働時間は2000時間くらい。すでに仕事はなくなっている。労働時間の減少は仕事を失っているのではなく、ほかにやることが増えているということ。ゲームをやったり飲みにいったり、人に時間ができるとそこに産業が生まれる。労働時間の減少は仕事がなくなっているのではなく、生み出しているということ。何の心配もいらない」と話す。

「新製品が続々と生み出されているいる現代。食わず嫌いをせず、全部試す。新しいものに触れると発想は広がっていくはず」と夏野氏
「新製品が続々と生み出されているいる現代。食わず嫌いをせず、全部試す。新しいものに触れると発想は広がっていくはず」と夏野氏

 労働時間が減り、新サービスや新製品が続々と登場してくる現在において、中島氏は夏野氏に「これから未来を設計する人にどんなメッセージを送るか」と問いかける。

 夏野氏は「こんなにおもしろい時代はない。10年前に存在しなくても、10年後にはみんなが使うような新製品が続々と生み出されている。こうした新製品や新サービスはどんどん試してほしい。私はテスラにも乗っているし、自宅には『aibo』もいる。食わず嫌いをせず、全部試す。もちろんだめなものもたくさんあるが、そうした新しいものに触れると発想は広がっていくはず」とアドバイスを送る。

 中島氏が「悲しいのは、何が好きかわからずに就職してしまう人がいること。学校の役割はいろんなものを試させて、その中で1つでも夢中になれるものを見つけること」と話すと、夏野氏は「まさにそのとおり。今は、Googleがなんでも教えてくれる時代。暗記はいらない。学校は教育ではなく、やりたいことをみつけられる出会いの場にした方がいい」と受けた。

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