「失われた40年」にしないために--中島氏と夏野氏が話す「iモード」誕生秘話から教育制度見直しまで

 日本のデジタル化、ネット化の転換点を長年に渡り見てきた中島聡氏と夏野剛氏が、一般社団法人 シンギュラリティ・ソサエティを立ち上げた。目的は、技術革新を利用し人工知能が台頭する時代における未来の設計者、起業家の育成。8月8日の新団体立ち上げを記念して、8月24日に中島氏と夏野氏による対談会「Invent or Die - 未来の設計者たちへ」を開催した。

 中島氏は「Windows 95を設計した日本人」として知られる人物。一方の夏野氏は「iモード」を手がけ、現在はテレビ番組のコメンテーターとしても活躍している。対談会の冒頭では、平成元年と平成30年の世界時価総額ランキングに触れ、「バブル崩壊から現在まで、日本、米国、中国の企業を比べると日本の低迷がよくわかる。バブルは言い訳にできない。なぜ(低迷が)こんなに続いているのか」(中島氏)と、日本の現状について話した。

中島聡氏と夏野剛氏が一般社団法人 シンギュラリティ・ソサエティを立ち上げた
中島聡氏と夏野剛氏が一般社団法人 シンギュラリティ・ソサエティを立ち上げた

今のままの日本が続けば「失われた30年」は「40年」になる

 中島氏は「バブル崩壊前は時価総額ベスト10のうち、7社が日本企業だったが、今やゼロになっている。この低迷は国自体という見方もあるが、米国は落ち込む企業がある一方、台頭している企業がある。そう考えると国ではなく、勝ち組の企業が生まれている」と説明。さらに、日本を代表する企業の経営者たちが現在、起業や転職経験のない生え抜きであることに対し「Facebook、Google、Amazonに比べると、経営者の資質が大きく異なる。日本が元気だった時代は、創業者が経営を担っていた。元気な会社がたくさんあった」と振り返った。

 こうした日本企業の現在を顧みて、中島氏は「今のままの日本企業が続けば『失われた30年』は『40年』になる。ここから新しい未来をつくるためにがんばらないといけない。そのために一番いい方法は自分で作ること」とし、シンギュラリティ・ソサエティはそのためのオープンサロンにしていきたいと設立主旨を話した。

 対談は、自動運転、教育などいくつかのテーマを設けて進められた。スクリーンに映し出されるスライドには、タイトルのみが書かれており、中島氏が「相手が良ければ対談はできる(笑)」と話す通り、ライブ感あるやり取りが終始交わされた。

 最初のテーマは、夏野氏が手がけたiモードについて。中島氏が「お堅いイメージがあり、重鎮ばかりがいるNTTドコモという会社で、なぜこんなに新しいことができたのか」と問いかけた。

 夏野氏は「当時受けた司令は、手段は問わないからネットと携帯電話をつなげということ。すでに、NTTドコモの中には音声だけをやっていたら、先づまる。誰もやらない新しいことをやらなければ一番を維持できないという思いがあった」と当時の社内事情を明かす。

 iモードの開発チームは、ネットに詳しい他社からの転職組と社内から新しいことをやりたいと集まった人材。夏野氏は「その頃のNTTドコモでは大変めずらしいチーム構成。誰も成功すると思わなかったため放っておかれた感じ(笑)」と表現する。

 夏野氏によると、日本のネットの歴史は1998年に始まっており、iモードはそのタイミングに合致。「成功しないと思われていたこともあり、自由にできたこと、ネットの技術が登場し、浸透するタイミングに人材と資金をそろえ、一気に作ったことがiモードができた最大の要因」と言う。それを受け中島氏は「僕にとってiモードは、一瞬だったかもしれないけど、日本がその後の(ネットの)世界をリードする大チャンスだった」と当時の印象を話した。

対談会ではタイトルのみが書かれたスライドを掲示。対談で出てきたキーワードなどがリアルタイムで書き足されていた
対談会ではタイトルのみが書かれたスライドを掲示。対談で出てきたキーワードなどがリアルタイムで書き足されていた

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