フェイスブック ジャパンが初の行政連携で神戸市と組んだ理由--両社に狙いを聞く

 2018年に日本語サービス開始から10周年を迎えるフェイスブック ジャパンは、「地域経済・地域コミュニティ活性化に関する事業連携協定」の締結を7月30日に発表した。職員や市民、中小企業を対象にした実践的プログラムを9月から実施するなど、ソーシャルネットワークを活用した地方創生支援活動を本格的に開始する。

 全国初となる行政との取り組みではどのような活動を行い、何を目指そうとしているのか。フェイスブック ジャパン代表取締役の長谷川晋氏と、協定の調整役を務める神戸市企画調整局係長の長井伸晃氏に話を聞いた。

フェイスブック ジャパン代表取締役の長谷川晋氏(右)と協定の調整役を務める神戸市企画調整局係長の長井伸晃氏(左)
フェイスブック ジャパン代表取締役の長谷川晋氏(右)と協定の調整役を務める神戸市企画調整局係長の長井伸晃氏(左)

フェイスブックと神戸市が連携したきっかけ

ーーフェイスブック ジャパン(以下フェイスブック)が、特定の地域の行政とここまで集中的に連携するのは初めてと聞いています。

長谷川氏 : 経済、社会、人がそれぞれ抱える課題をテクノロジやコミュニティの力で成長の機会に変えるということをこれまでもしてきました。たとえば、中小企業を対象に、デジタルテクノロジを活用してビジネス成長につなげる方法をサポートする「Facebook Marketing Boot Camp」というセミナーを全国5都市で開催しています。ほかにも、超高齢化社会を見据えてアクティブなシニアにソーシャルネットワークを安心安全に使っていただくためのプログラムを2017年から始めたり、女性の起業を応援するプログラムを展開したりしています。

 また、自治体や政治家へのアドバイスは以前から日常業務の一環としてやっていますが、今回のように市政の情報発信を継続的にサポートするために、正式に特定の地域と連携したのは日本では初めてです。海外ではややアングルが異なり、Facebook Comunity Boostという名前で地元の中小企業を含むビジネスやコミュニティのサポートをしている例はあります。今回の協定にはそうした活動も含まれていますが、市政の情報発信も含めて一緒にやらせてもらうというのはあまり例がなく、非常に面白い取り組みだと思っています。

9月からの活動開始に先駆けて神戸市長の久元喜造氏と長谷川氏による締結式が開かれた
9月からの活動開始に先駆けて神戸市長の久元喜造氏と長谷川氏による締結式が開かれた

ーー何がきっかけで今回の協定締結に至ったのでしょうか。

長谷川氏 : フェイスブック ジャパンは2018年に10周年を迎え、日本にあるいろいろな可能性をつないでもっと輝かせることに貢献したい、という大きなテーマを掲げています。さらに大きな目標として、地域コミュニティと経済の活性化があるのですが、それらは当社が単独でやるより地方の自治体と連携した方が貢献できるのではないかと考えていて、実際に長崎県の壱岐島を訪れてお話を聞いたり、地方自治体のリーダーの方々と意見交換をさせていただいたりもしてきました。

 神戸市とのつながりができたのはそんな時で、Instagram最高製品責任者のケビン・ウェイル氏が神戸市を表敬訪問したのがきっかけです。以前からInstagramを積極的に利用されていた神戸市をケビンが2017年10月に訪問した際に神戸市長の久元喜造氏とお会いし、神戸市が掲げられている「神戸2020ビジョン」において、ITを活用した経済活性化や雇用創出を目指しているという話から、お互いがやろうとしていることが近いと確認できたことが連携につながりました。

フェイスブック ジャパンは10周年を迎える
フェイスブック ジャパンは10周年を迎える

ーー神戸市は自治体の中では早くから積極的にソーシャルネットワークを活用していますよね。

長井氏 : 神戸市にはFacebookの公式アカウントが87ありますが、各部署が独自に運営している状態で数も多すぎるくらいあります。それらで体形付けた情報発信ができているか疑問があると市長からも指摘されていて、今後の運用の仕組みやルールづくりについて、どこかに相談したいと考えていました。そこにウェイル氏の訪問があり、フェイスブックとの話し合いが始まりました。

 その中で、市政情報の発信の仕方について職員向けにセミナーをしてほしい、ソーシャルネットワークの利用でビジネス活性化が見込める市内の中小企業に使い方を紹介してほしいなど、以前から考えていたことをお話させていただいたところ、とんとん拍子で話が進んで今回の協定締結につながりました。ソーシャルネットワークを3〜4年前から活用しはじめて、ソーシャルネットワークの力は本当にすごいと感じていたので、今回の協定締結は個人的にはやっとここまできたという思い入れもあります。もちろんこれからが始まりで、いろいろなアイデアをフェイスブックと一緒に実現させたいと思っています。

市政情報発信支援プログラムでは職員のセミナーやSNS運用アドバイスをはじめ、個別のコンサルティングも予定されている
市政情報発信支援プログラムでは職員のセミナーやSNS運用アドバイスをはじめ、個別のコンサルティングも予定されている

トップランナーだからこそできることもある

ーー行政としては前例がないということで、楽な道のりではなかったと思います。

長井氏 : 前例がないのはもちろん大変ですが、一方でトップランナーだからこそできる可能性や面白さ、メリットもあります。この数年の神戸市は、自分たちでやりたいことを面白がってやるという流れがあり、「一番じゃなければインパクトがない」と市長も積極的に支援してくれています。職員としてその流れを全力で生かそうとしているところで、まだこれからですが蓄積できたノウハウを全国の行政に共有することも視野に入れています。

長谷川氏 : 最初にやるのはリスクや失敗があり、当然痛い思いをすることも両者ともにあると思っています。それでも道を切り開いて一緒にやっていこうとおっしゃっていただいた神戸市をわれわれもリスペクトしていて、できるだけ貢献しようと責任を感じているところでもあります。

ーー神戸市とフェイスブック両者の目的意識が合致したことが今回の協定につながったということですね。フェイスブックが企業として神戸市に期待していることはありますか。

長谷川氏 : われわれはもともと地域で重要な役割を担っているコミュニティを応援するプラットフォームであり、どれだけのパワーが発揮されるのかを自分たちも一緒に見たいという思いがありました。地域のニーズがわかっている自治体と一緒に行うことで、よりポジティブなインパクトを出せると考えていて、そこから当社に興味を持ってもらったり、継続性が生まれたりといったバリューも生まれるのではないかと期待しています。

 今回の協定では3つの注力エリアを掲げていますが、いずれもフェイスブックから一方的に提案したのではなく、神戸市との話し合いで決めています。それも 一度にすべて決めているのではなく、まず第1弾として、これをやったらいいんじゃないかと決めた内容を、9月から1週間かけて集中的に行い、そこで得られた学びを元にフォローアップをどうするかをさらに話し合って決める。1回限りで終わらせず、継続性を前提にやり方を一緒に模索しながら進めていくのがいいと個人的には思っています。

ーー継続という点では、行政は年度ごとに組織や予算が変わりますが、本当に可能なのでしょうか。

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