日本では、スマートフォンを使った飛行機のチェックインなどが少しずつ普及しつつあるが、航空各社のデジタルシフトはこれからというところ。一方で海外に目を向けると、積極的に最新のテクノロジやデバイスを取り入れている航空会社も少なくない。ニュージーランド発の「ニュージーランド航空」もその1つだ。
ニュージーランド航空は1940年に設立された航空会社で、アジア太平洋を含む18カ国50都市以上への直行便を運航している。日本からニュージーランドへ直行便を運航する唯一の航空会社でもあり、成田・羽田空港や関西国際空港(季節運航)からの飛行時間は10時間半ほど。キャビンアテンダントが乗客とフレンドリーに接することでも知られており、AirlineRatings.comの「エアライン・オブ・ザ・イヤー」に5年連続で輝いている。
テクノロジ活用として代表的なものは、公式のモバイルアプリだろう。モバイル搭乗券として利用できるだけでなく、最新のゲート番号や座席番号、搭乗時刻や出発時刻、目的地の天候といった情報をリアルタイムに確認できる。このほか「Airpoints Dollars」と呼ばれるポイントの残高確認、フライト詳細情報のカレンダーへの追加・共有などが可能。さらに、アプリを使って事前にコーヒーを注文してラウンジで受け取れる、気の利いた機能まで備えている。
搭乗中の機内モニターにも先進的な機能が充実している。たとえば、映画や音楽視聴、ゲームといった基本的な機能はもちろんのこと、入国カード、アメニティなど目的別にキャビンアテンダントを呼び出すことができ、ドリンクや軽食などもタッチパネルで選んで注文できる。ニュージーランド航空の歴史や役員陣の情報、さらには現地でクルマを運転する際の注意点といった豆知識まで閲覧することが可能だ。
シートを指定してチャットができる機能も搭載している。これにより、隣同士の席が取れず離れ離れになってしまった家族や友人と、インターネットが使えないフライト中もコミュニケーションができるので安心だ。また、キャビンアテンダントに「寒いのでブランケットをもらえますか?」とメッセージを送ったり、逆にキャビンアテンダントからメッセージを受け取ったりできるという。
ニュージーランド航空といえば、ユニークな機内安全ビデオも欠かせない。「メン・イン・ブラック」などの人気映画とコラボしたものや、ニュージーランド南極研究所とともに地球温暖化防止を訴えるものなど、その奇抜な内容が度々話題となっている。映画「ホビット」とコラボした「壮大すぎる機内安全ビデオ」編は、YouTubeでの公開からわずか1週間で1600万再生を記録した。
ウェアラブルデバイスもいち早く取り入れている。2016年から独自のスマートバンドを手首に装着することで、留学などで親元を離れた子どもがフライト前後でどこにいるのかを保護者が公式アプリから確認できる「エアバンド」の導入を開始した。5~16歳が対象で、11歳までは着用が義務付けられているという。
このほか、最新の取り組みとしては、ARゴーグル「Magic Leap One」を開発する米国Magic Leapと戦略的開発パートナーシップを結んだことを6月14日に発表した。同社と共同でニュージーランドならではの景色や、ワクワクするアクティビティを紹介するコンテンツを開発し、ユーザーに届ける予定だ。
なぜ、こんなにも積極的にテクノロジを活用するのか。その理由について、ニュージーランド航空ボーイング777客室乗務シニア・マネジャーのマーク・メイヤーホフラー氏は、「私たちはカスタマージャーニーサイクルを大切にしており、お客様の旅の始まりからお帰りまでのすべての体験をより良くしようと、数年前からデジタルに力を入れている」と説明する。
飛行時間が長ければ長いほど、フライト中の過ごし方はその後の旅行の質に影響する。ニュージーランド航空では引き続き、最新テクノロジを取り入れた”空の旅の革新”に挑むとしている。将来的には、ブロックチェーンを活用した予約管理システムや、多言語対応できる翻訳デバイスの開発も検討しているという。
取材協力:ニュージーランド大使館 エデュケーション・ニュージーランド(ENZ)
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