福岡ソフトバンクホークスとソフトバンクは、「ホークスVR チケット&ゴーグルセット(ユニフォーム付き)」を、6月15日より限定販売している。その詳しい内容とVRゴーグルを提供したいきさつなどについて、福岡ヤフオク!ドームで記者向け説明会が開かれた。
これは、7月26日から福岡ヤフオク!ドームで開催される「鷹の祭典2018」の4試合を、VRによるライブ配信で視聴できるチケットが付いたオリジナルのVRゴーグルと、鷹の祭典2018専用ユニフォームのレプリカをセットにして販売するもの。ゴーグルにスマートフォンを挿入し、ピクセラが提供するVRアプリ「パノミル」をダウンロードして視聴する形となる。価格は8640円で、福岡ヤフオク!ドームと福岡ソフトバンクホークス公式通販ショップ「ダグアウト」で限定販売されている。
ソフトバンクの新規事業開発部 新規事業推進部 VR事業推進課 担当課長である杉浦正武氏によると、今回の取り組みにはVRの普及に向けた課題が大きく影響しているとのこと。同社の調査でも、VRは20〜30代の若い世代を中心に、男女を問わず興味を持つ傾向にあるという結果が出ているが、「期待されているほどVRは普及していない」と杉浦氏は話す。
その理由について、杉浦氏はVRに対応するコンテンツが不足していること、そしてゴーグルの普及が限定的であることの2つを挙げる。「コンテンツが不足しているからゴーグルの購入動機が不十分で、ゴーグルが増えず市場性が不透明だからコンテンツが増えない。そうした負のスパイラルを打開する必要がある」(杉浦氏)と話すが、実写のコンテンツを増やす上ではそれ以外にもう1つ、大きな課題を抱えているという。
それは権利処理など撮影に多くの手間がかかること。中でも大きな問題となっているのがカメラの設置位置であるという。VRは遠距離の映像を撮影しても、視聴できる幅が狭く臨場感のない映像になってしまうため、「首を振って180度で視聴できる、近距離で幅が広い映像が必要」(杉浦氏)なことから、いかにそうした場所にカメラを設置できるかが重要になってくるのだそうだ。
そこで今回のVRライブ配信実施にあたり、杉浦氏は臨場感のある映像が撮影できるよう、カメラを近距離に設置することを重視したとのこと。実際VR撮影用のカメラは、福岡ヤフオク!ドームのバックネット裏と一塁側、三塁側、そして外野の4箇所に設置されているが、バックネット裏のカメラは球場に穴を空けて設置するなど、ソフトバンクホークスの協力を得てプロ野球のルールに影響しない範囲で、可能な限り選手に近い場所に設置したという。
さらに今回のVRライブ配信では、カメラのマークに視点を合わせることでカメラの位置を4箇所に切り替えられる仕組みや、ピクセラの「MagicVision」という技術を活用し、前面のスクリーンでテレビのような実況映像も視聴できる仕組みも用意。「VR映像だけではクロスプレーなどの視聴に限界があるので、過不足なく綺麗に視聴できる仕組みを揃えた」(杉浦氏)。
また、視聴に関してはWi-Fiの利用を推奨しているが、4Gのネットワークでも視聴自体は可能とのこと。ただし、データ通信料に配慮し、Wi-Fi視聴時の配信速度は最大10Mbpsだが、4G視聴時は3Mbpsに絞られるとのことだ。
ちなみに今回のサービス提供に先駆けて、ソフトバンクでは3〜4月にかけて実施された、ソフトバンクホークスの開幕戦に合わせる形で実証実験を実施。この時はアプリとライブ配信のみの提供で、ゴーグルは各自が用意する形でのサービス提供であったほか、三塁側のカメラがなく、バックネット裏のカメラも遠方から撮影する形を取るなど、今回のサービスよりも低いスペックでの視聴体験だったという。
それにもかかわらず、試合終了まで視聴数は減らなかったとのこと。中には60分以上視聴している人もいたそうで、「熱心な人は1時間視聴してくれる。VRはゴーグルを被ったままの状態でも視聴し続けられるものだという証拠になり、勇気づけられた」(杉浦氏)ことから、正式な形でのサービス提供につながったのだそうだ。
今回はあくまで鷹の祭典2018の4試合のみが視聴できる形で、通年でソフトバンクホースの試合中継が視聴できるわけではない。杉浦氏はこの点について「技術的な問題はないので、ビジネスモデル次第だ。ユーザーを確保して売上が上がるという自信を持ってから始めた方がいいのではないか」と話しており、ビジネスモデルを構築が課題との認識を示した。
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