“少ないデータ”で高精度AIを実現したRidge-i--白黒映像をカラーに、ゴミ焼却炉は自動化 - (page 2)

ゴミ焼却の自動化やオイル漏れの特定

 このほかにも、Ridge-iは多くの案件に取り組んでいる。たとえば、ゴミ焼却炉の最適化事例は興味深い。一般的な焼却炉に投入するゴミは、中央制御室からクレーンを遠隔操作し、均質にして燃えやすくするなどさまざまな人的処理が加わっている。この部分で、カメラから得た映像を元にAIが燃えやすさなどを解析することで自動化を可能にするという。「自動化の実証実験は順調に進んでおり、すでに本番稼働に向けて進めている最中」(柳原氏)だが、人的負担の軽減と同時にコスト減にもつながり、本ソリューションの社会的意義は大きい。

 人の作業を機械が代替するソリューションは他にもある。一般的な組み立てラインでは、製造中に加わったキズを目視し、欠品として取り除くが、Ridge-iでは次の手法で自動化に取り組んでいる最中だ。「検品作業におけるキズは種類が増える傾向にあり、見分けることが難しい。そこで、学習データとして良品画像を使用する半教師あり学習を行い、検品画像をAIにかけると、良品になかったキズやゆがみが検出可能になる」(柳原氏)という。現在は1024×1024ピクセルに対応しているが、今後は日本の製造業で求められるレベルに対応するため、高解像度版の開発を進めるとしている。

オイルスリック(油膜)がある領域をAIで瞬時に特定
オイルスリック(油膜)がある領域をAIで瞬時に特定

 海上へのオイル流出対策は、われわれの生活を脅かす喫緊の課題だが、一般的には放出したマイクロ波の反射を計測するSAR(合成開口レーダー)画像を用いて流出状況を分析する。だが、これは熟練者でも難しい作業で、1枚の映像を読み解く間に次の映像が送られる状態だ。この作業にAIを利用すると、オイルスリック(油膜)がある領域は100%の精度で特定し、解析時間も数秒で済むため、ニアリアルタイムの分析が可能になるという。「波や対流とオイルをルールベースで切り分けるのは難しく、機械学習の長所が現れた事例だ。社会的意義も大きい」(柳原氏)。Ridge-iはこのほかにも、品質予測や生産条件を最適化するAI、波形データから故障予兆を検出するAIなどの開発に取り組んでいる。

 このようにAIの可能性を次々と具現化するRidge-iだが、企業のAI活用姿勢について、次のように提言した。「AIが人の仕事を減らすと捉えると反発が生まれるので、AIの良い面を理解してもらうための共同作業は導入時に欠かせない。われわれは導入先の現場担当者と密接な打ち合わせを重ねている」(柳原氏)と、ロジックを理解することで物事の利点を認識するのが重要だという。

 同社は長期的ロードマップとして、「Floor segmentation R&D Project」に取り組んでいるそうだ。「今は強化学習に注目している。目の不自由な方を支援するツールや車椅子による自動走行の可能性を探っている最中。AIを目や足の代わりにして最適化経路を導き出す」(柳原氏)こと目指している。

学習モデルを微調整することで、通行可能なエリアを緑色で配色し、空間認知精度を高めている
学習モデルを微調整することで、通行可能なエリアを緑色で配色し、空間認知精度を高めている

 登山やトレイルランニングを趣味とし、富士山の1日3往復や、UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)を完走するなど、実はアスリートとしての一面も兼ね備える柳原氏だが、「モンブランより辛い日々になりつつある」(柳原氏)と嬉しい悲鳴をあげるほど、同社の引き合いは増え続けているという。機械学習の進化をビジネスソリューションに落とし込む同社の能力は、今後もさらに注目を集めるだろう。

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