logo

“少ないデータ”で高精度AIを実現したRidge-i--白黒映像をカラーに、ゴミ焼却炉は自動化

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2018年07月08日 08時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 Ridge-iは、2016年7月に設立された深層学習のコンサルティングや開発を担う企業だ。2017年に放送されたNHKスペシャル「戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946」内の白黒映像を、AI(人工知能)でカラー化したことで注目を集めた。同社が手がけるAIソリューションやその活用によって広がる可能性について、代表取締役社長の柳原尚史氏に聞いた。

Ridge-i代表取締役社長の柳原尚史氏
Ridge-i代表取締役社長の柳原尚史氏

「最初の1枚」を人が彩色するだけで自動彩色

 柳原氏は、小学生時代に親からゲームを禁止されていたことから、何とかしてゲームで遊べないかと考え、当時自宅にあったPC-9801を使ってゲームを自作。それをきっかけにエンジニアの道を進んだ。その後、大学を卒業し大手通信業社や大手金融機関に務める中で、「リスク分析やアルゴリズム取引きの開発に携わっている時に深層学習の可能性に気づき、Ridge-iを設立した」(柳原氏)と振り返る。

Ridge-iが手がけるAIの強み
Ridge-iが手がけるAIの強み

 Ridge-iの強みは、少ないデータでも高い精度を実現する画像解析技術や、PoC(概念実証)で終えずに実際のビジネス現場で活用できるAIを開発していること。代表的な事例が、冒頭に紹介したNHKの白黒映像のカラー化だ。同社はこれとは別に、創業直後にエリザベス女王がバッキンガム宮殿を訪れた際のニュース映像をカラー化した。100万枚の白黒化した画像を学習データとして使用したもので、一見すると機械学習による成果とは思えないほど上手に彩色しているが、「配色パターンは学習したが洋服や自動車は白黒のまま」(柳原氏)となってしまっている。256階調のグレースケールはルールベースで塗り分けることはできず、既存の変換ロジックでは塗り分けが難しいそうだ。数多く発表されている深層学習系の論文は技術レベルでは可能ながらも、あと一歩の部分が欠落し、「ビジネスにつながらないケースが多い。われわれはそこに踏み込むことでビジネスソリューションを提供する」(柳原氏)。

 Ridge-iによる自動彩色システムは改良を重ね、最初の1フレームのみ人が彩色することで、機械学習による塗り分けの問題を克服した。柳原氏は紅葉に彩られた木々の映像を見せ、「そのままでは山や木々と判断して緑色に塗りつぶしてしまうが、(前述の手法を用いることで)動画全体の彩色を可能にした」(柳原氏)という。4Kの白黒映像を彩色した結果は、木々の揺れや雲の流れにも対応し、その風景を見事に再現した。

最初の1フレームのみ人が彩色することで、機械学習による塗り分けが可能に
最初の1フレームのみ人が彩色することで、機械学習による塗り分けが可能に

 そして本技術を用いたのが、NHKアートと共同開発した彩色システムである。カラー化したのは戦時中の映像だが、汎用的なAI彩色サービスではビビッドな彩色になり、どうしても非現実的な映像になってしまう。そこで時代考証を行い、防災頭巾の色や生地の雰囲気を確認しつつ、最初の1フレームで彩色を指定することでリアリティを再現した。従来のカラー化はフレームごとに彩色を施しており、仮に1分間の動画であれば24フレーム×60秒=1440枚の映像に手を加えなければならなかったが、同社はAIにより1カ月程度の実作業でこれを終えたそうだ。このようにAIをアシスタントのように活用することで、自動彩色システムがビジネスクオリティに達したのだ。

 その結果として、NHKスペシャルの「戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946」にたどり着く。こちらはリンク先で一部映像を視聴できるので、ぜひご覧いただきたい。本ソリューションは現在「Ridge-i AI Video Editing Assistant」としてパッケージングが始まっており、映像制作会社向けアシスタントツールとして提供をはじめている。保存状態やフィルム加工の過程で入った傷の削除や、特定人物をマスキングする機能、4K/8Kなどの高解像度化加工機能は現在開発中だが、そう遠くない時期にリリース予定だという。

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]