ラクスルは、5月31日の株式上場後初となる事業戦略説明会を開催。同社代表取締役社長CEOの松本恭攝氏が、各サービスの実績を紹介するとともに、“シェアリングプラットフォーム”としての展望を語った。
2009年に創業した同社は、「古い産業にインターネットを持ち込んで、産業構造そのものを変えていく」(松本氏)ことを目的に、2013年に印刷シェアリングプラットフォーム「ラクスル」の提供を開始した。全国の印刷会社をネットワーク化し、各社の非稼働時間を活用することで、低価格な印刷物を顧客に提供するサービスだ。会員数は2018年6月時点で60万ユーザーを超え、2017年7月期の売上高は76億7000万円におよぶという。
松本氏は、ラクスルならではの競合優位性として、(1)サプライチェーンに深く入り込んでともに生産ノウハウを作ることで、低コストでの生産を実現する「オペレーション」、(2)一般的な印刷会社では外注していることも多いシステムを自社で内製することで柔軟に開発できる「テクノロジ」、(3)広告代理店を極力使わず、自社でウェブ広告やテレビCMを企画して放映している「マーケティング」の3点を挙げた。
また、印刷会社のコンサルティングもしているという。3台の印刷機を自社のR&D工場におき、印刷の生産性を上げるための研究を日々行っているとのこと。さらに、各印刷会社との共同購買という形で毎月数百トンの紙を輸入することで、小さな印刷会社でも大手企業と同等の紙を仕入れられるようにし、生産ノウハウも同社がサポートすることで高い生産効率での印刷を可能にしているという。「ただ空いている時間を活用するだけでなく、安く仕入れて高い生産性を実現することで儲かるようにしている」(松本氏)。
ラクスルに続いて2015年に開始したのが、物流シェアリングプラットフォーム「ハコベル」。運送会社に所属するドライバーの“空き時間”を使って荷物を低コストで早く配送するサービスだ。会員数は2018年1月末時点で1万2000ユーザー、2017年7月期の売上高は1億6000万円だという。松本氏によれば、ドライバーと荷主の平均マッチング時間は約4分。また、収入の2~3割がハコベル経由というドライバーも増えているという。
物流業界は多重下請け構造であり、「10万円の仕事の下請けで手取りが4万円まで減ってしまうこともある」(松本氏)ことから、小さな物流会社をネットワーク化して荷主とダイレクトにつなげることで、業界の課題解決につなげたいと話す。2017年7月にはヤマトホールディングスとも提携しており、荷主と物流事業者の双方が抱える課題を同時に解決できる、オープン型の物流プラットフォームの構築を進めているという。
松本氏は、グローバルにおいて2007年には石油会社や銀行が時価総額ランキングで上位を占めていたが、それからわずか10年でこれがアップルやアマゾン、アリババといった“プラットフォーマー”に入れ替わっていると説明。かたや日本はトヨタやNTT、任天堂などが10年前と変わらずランクインし、その顔ぶれにほとんど変化はないことから「ユーザーはすでにプラットフォームを使っているのに、企業側がその波に乗れていない」と指摘する。
ただし、近年は日本でも多くの企業がプラットフォームビジネスを展開している。たとえば、LINEなどは代表的な例だろう。また、プラットフォームにシェアリングの要素を取り入れる企業も増えている。CtoCプラットフォームであるフリマアプリを展開し、6月19日に上場する予定のメルカリなどだ。松本氏は、ラクスルとハコベルはBtoB向けのシェアリングプラットフォームだと説明し、「各産業の取引コストを下げ、顧客・事業者の双方が幸せな世の中にしたい」と思いを語った。
また、印刷、物流に続き狙う業界については「広告」を挙げた。同社では、2015年3月から新聞折込やポスティングのサービスを展開しているが、これを拡充し、2017年10月から駅ばりポスターや電柱広告などをネットで注文できる「集客支援プラットフォーム」を開始している。松本氏は、将来的には同サービスを広告業界のあり方を変えるサービスへと成長させたいと展望を語った。
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